もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2026年7月号

『チルド』(7/17公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』五十九回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
7月公開の映画からは、いつもより一作品多いこの五作品を選びました。

『きれっぱしの愛』(7月3日公開)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/kireppashi_ai_NOROSHI/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=9aT1nA5WFlw

main.jpg『ゴッドランド/GODLAND』を手掛けた気鋭のフリーヌル・パルマソン監督の最新作『きれっぱしの愛』。
 北欧・アイスランドの田舎町を舞台に、若くして結婚して長女と双子の男子の三人の母となったアンナ。彼女は子育てをしながら芸術家の道を模索していた。離婚したが、彼女に未練たっぷりな漁師の元夫のマグヌスはなにかと家を訪ねてきていた。
「やり直せる可能性は?」「ない」という元夫婦のやりとりや元家族の五人で一緒に食事をしている光景も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編では小林聡美さんのナレーションがあり、最後には「愛おしい 私たちの生活。(ときどき、殺意)」という言葉と共にテロップが表示されます。さらにアンナがファックサインをカメラに向けている姿も映し出されます。
 子どもたちと愛犬パンダの生活は愛おしくもあるものの、一人の女性として芸術家の道を歩もうとするには煩わしさももあるのでしょう。また、離婚したのにも関わらず、子どものことも気になりつつもまだアンナに未練たらたらなマグヌスとの関係性に苛立ちを感じつつ、子どもたちの父としては無視できないという板挟になっているようにも見えます。最後は芸術家として評価されるきっかけがあり、元夫だけを残してアイスランドではない新天地に向かうのではないでしょうか?

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『きれっぱしの愛』
7月3日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
配給:NOROSHI、ギャガ
ⓒ STILL VIVID, SNOWGLOBE, HOBAB, MANEKI FILMS, FILM I VÄST, ARTE FRANCE CINEMA

『ユースフル・ゴースト』(7月10日公開)
公式サイト:https://sundae-films.com/useful-ghost/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=TZRiQWH_CBk

 第78回「カンヌ国際映画祭」〈批評家週間〉グランプリを受賞したタイの新鋭ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク監督による『ユースフル・ゴースト』。
「霊は製品にも憑依します」というセリフにあるように、最愛の妻のナットを亡くして悲嘆に暮れていた夫のマーチの前に、彼女が掃除機に宿るかたちで舞い戻ってくる。しかし、マーチには掃除機に宿っているナットが見えるが、他の人にはそうではないらしく、病室で掃除機にキスをしている彼の姿を母親たち親族が不気味なものを見るような視線を送っているのが予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。現世に戻ってきたナットが「あと少しで私の夢が叶うの」と言っているシーンも予告編にあります。また、「人間と幽霊をめぐる壮大な愛と抵抗の物語」というテロップもあり、この「抵抗」という言葉が気になります。
 幽霊というのはもう「この世」の者ではない存在であり、自分のことを忘れられるというのが一番の恐怖なのかもしれません。そして、生きている人間はどうしても少しずつ忘れていきます。マーチはナットに自分のことを忘れさせないために帰ってきたはずです。きっと最後は彼をあちら側に連れていくのではないでしょうか? あるいは二人で一つの掃除機に憑依する形で一緒になるというラストかもしれません。


『ユースフル・ゴースト』
7月10日(金)公開
配給:SUNDAE

『海辺の一日 4K』(7月10日公開)
公式サイト:https://www.the-day-on-the-beach-4k.com/
予告編:https://youtu.be/E0TjjBy6cAY?si=6_F42Nz-SCIv7-th

メイン『海辺の一日』.jpg『牯嶺街少年殺人事件』『ヤンヤン 夏の想い出』で知られるエドワード・ヤン監督の劇場用長編デビュー作『海辺の一日 4K』。
 この連載では基本的に新作を紹介していますが、今作は日本ではフィジカルでの販売はされておらず、限られた機会でしか上映されていない幻のデビュー作です。今回が一般劇場で観られる機会となるので取り上げさせてもらいました。
 13年ぶりに再会した二人の女性(佳莉・ジャーリィと蔚青・ウェイチン)の現在と過去が描かれていく内容のようです。「13年前――好きな人と一緒にいるだけで私たちは幸せだった」「この社会ってわざと夫婦を引き離すみたい」というセリフは彼女たちの生きてきた時間と現実と理想の乖離を感じさせます。
 ここからは妄想です。予告編を見るだけでも、エドワード・ヤン監督の『台北ストーリー』『エドワード・ヤンの恋愛時代』『カップルズ』という急激に近代化していく台湾を描いたニューウェーブ作品につながっているもの、その萌芽を見てとれます。のちにウォン・カーウァイ監督作品でもカメラマンを務めたクリストファー・ドイルが撮影をしているのも注目ポイントです。
「僕はここからこの世界ともう一度知り合いたい」というセリフがこの作品を監督が作った理由のようにも感じられます。映画館で再びエドワード・ヤン作品に会いに行きましょう!

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『海辺の一日 4K』
7月10日(金)unkamuraル・シネマ 渋谷宮下、角川シネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国順次公開
配給:TWIN
© 2010, 2024 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

『チルド』(7月17日公開)
公式サイト:https://nothingnew.film/chilled_anymart/
予告編:https://youtu.be/j0eDXiLpVOA

★チルド_メイン場面写真.jpg 染谷翔太を主演に迎えた、CMディレクターとして活躍している岩崎裕介の初長編監督作『チルド』。
 コンビニエンスストア「エニーマート」の店長だという堺(染谷)は毎日繰り返されるルーティンという変わらない日々を過ごしていた。「案外、そういうところから始まるのかもしれません。裏返るんですよ」という女性や、「死んでました。8000人」と堺に言っているバイト(令和ロマン・くるま)の姿も予告編で見ることができます。
 ここから妄想です。コンビニという私たちの身近にあるこの便利なシステムは、まるで「終わらない日常」を象徴するような場所であり、いつも通りであることが常に求められています。そこでイレギュラーなことは起きず、働いている堺もそのことを疑問や苛立ちに感じているようにも見えます。
「なんか今、命というものが形を失っているように感じるんです」という言葉のあとに廃棄されている弁当などが映し出されるシーンが予告編にあります。「現代日本の若者の姿を鋭い風刺で描いている」という国際映画批評連盟からのコメントもあり、小さな社会における正しさやルーティンによって人が壊れていく様を描いているのかもしれません。タイトルが示すように凍る直前の温度から逃げ出すために堺は店舗に火をつけて、そこから解放されるというラストではないでしょうか?

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『チルド』
7月17日(金)テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル梅田ほか全国公開
配給:NOTHING NEW
©︎『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(7月31日公開)
公式サイト:https://spiderman-movie.jp/
予告編:https://youtu.be/8n96LS2Pfak

 トム・ホランドがスパイダーマンを演じるシリーズ四作目となる『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』。
「僕はピーター・パーカー。覚えてないよね。いつも一緒にいたけど...危険が及ばないように皆の記憶から消した。単なるピーターじゃなく、僕はスパイダーマンだから」というセリフと共にかつての恋人であるMJや親友のネッドの姿、NYで一人街を救うために戦っている姿が予告編で見ることができます。
「クモには成長周期が3回ある。その周期の間に脅威にさらされる」という発言も気になります。
 ここからは妄想です。それには「試練を乗り越えたクモは、いつか必ず...生まれ変わる」と続き、ピーターの白目も含めて眼が真っ黒になって覚醒した状態も予告編では見られます。また、前作でドクター・ストレンジの魔術によって、彼の記憶が全世界の人々から消されてしまい、恋人だったMJを遠くから見守ることしかできなかった彼と彼女が向き合っているシーンもあります。
 今作はパニッシャーを含めたヴィランたちからNYを守るために戦うはずですが、問題は消された記憶が戻るかどうかでしょう。終盤にMJとネッドも記憶を取り戻しますが、その代償として彼がみんなのことを忘れてしまい、さらなる続編に続くという終わり方ではないでしょうか?

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』
7月31日(金)日米同時公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

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