ネガティブなのになぜか元気が出る シオランの言葉が現代人に刺さる理由

- 『生まれるのも生きていくのもめんどくさい!超訳シオランの言葉』
- 済東鉄腸
- 飛鳥新社
- 1,870円(税込)

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皆さんは、エミール・シオランという名前を聞いたことがあるでしょうか。生まれたことへの呪詛を吐き続けたことで知られる"反出生主義"の思想家です。彼が生まれたルーマニアという国も含め、詳しく知らないという人も多いかもしれません。
そんなシオランの名言の数々を超訳して紹介した書籍が『生まれるのも生きていくのもめんどくさい!超訳シオランの言葉』です。
著者は、『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』で一躍話題をさらった作家、済東鉄腸さん。済東さんは、大学受験の失敗や東日本大震災、失恋などをきっかけにうつ状態となり、引きこもっていた時期にシオランを知ったといいます。本書では自身を救った言葉を厳選し、その一つひとつに済東さんならではの解説をつけています。
シオランの言葉を読むと感じるのが、20世紀を生きた彼の言葉が、なぜこうも現代を生きる私たちの心に刺さるのかということです。
たとえば、「孤独は、君が独りであることを教えてくれるのではなく、たった独りであることを教えてくれる。」という言葉。これを、済東さんによる「孤独が教えてくれるのはアンタが独りだってことじゃない。アンタが唯一無二の存在なんだってことだ!」という素晴らしき超訳と併せて読むと、深いシンパシーを感じる人もいるのではないでしょうか。
誰しも一人の寂しさに打ちひしがれる経験がある中で、シオランのこの言葉は「絶望まみれな孤独の人生をドンと肯定してくれる」と済東さん。さらに、「この呟きに限らず、シオランの言葉はある概念を真逆の概念へと変えてしまう、恐るべき力を宿したものばかりだ」(いずれも本書より)とつづっています。
他にも「生まれないことは、疑いなくありえる中でも最良のことだ。残念ながら、それはもう誰の手にも届かない。」「自殺は可能であるという慰めは、息も詰まりそうなこの部屋を無限大の広さにまで感じさせてくれる。」「こと疲労することに関しての有能っぷりは私自身驚くほどだ。生まれつきの疲労感、それは才能のようだ。私は疲労という才能を持っている。」「遅刻した者には死刑を導入すべきだ。」など、彼の言葉はネガティブのオンパレード。しかしこれが、今の混沌とした世の中でキラキラと輝きながら生きることに疲弊した人にとっては、一服の清涼剤となりそうです。
フィギュアスケーターの羽生結弦さんが、自身のアイスショーを構想する際の参考図書として、シオランの著書『生誕の災厄』を挙げたことが紹介されたほか、シオラン研究者を主人公にしたNHKの特集ドラマ『どうせ死ぬなら、パリで死のう。』が2025年3月に放送されるなど、近年、シオランはじわじわと再注目されています。
人生は本当にしんどいことが多いけれど、彼の言葉を読むことで、逆に「ええい、死ぬまでもうちょっと生きてやるか」という気持ちが湧き上がってくるかもしれません。
[文・鷺ノ宮やよい]
