崩れゆく父親を剥き出しの演技で体現。ベネディクト・カンバーバッチの魂の演技が光る『フェザーズ その家に巣食うもの』
『フェザーズ その家に巣食うもの』 3月27日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
突然訪れた妻の死。残されたのは夫と幼い息子たち。そんな彼らの元に現れたのは、悲しみに暮れる人間が好物だという、不思議な"喋る"カラスだった――。これは、40歳未満の新鋭に贈られるディラン・トマス賞を受賞し、世界36の言語に訳されたマックス・ポーターの傑作小説『悲しみは羽根をまとって』の物語である。
ノーベル文学賞作家のハン・ガンが「奇妙なぬくもりと美しさを秘めている」と称賛したこの物語が、待望の映画化を果たした。
本作『フェザーズ』で、崩れゆく父親を演じ、さらに自らプロデューサーも買って出たのがベネディクト・カンバーバッチだ。『ドクター・ストレンジ』などのハリウッド超大作で見せる知的で強靭な姿とは対照的に、本作では深い喪失に打ちひしがれ、脆くも生々しい一人の男として、まさに新境地とも言うべき渾身の演技を見せている。世界的地位を確立した名優が、これほどまでに脆い姿を晒して挑んだ本作には、並々ならぬ熱量が込められている。彼の新しい魅力を発見できる一本と言える。
物語は、深い悲しみに沈む家庭に、異質な存在である「カラス」が舞い込むことで加速する。特異なビジュアルで描かれるカラスは、父親の悲しみを食らいながら、言葉で彼を揺さぶり、時には寄り添う。映画『フェザーズ』は、ファンタジーとスリラーが見事に融合した演出で観るものを釘付けにする。
鑑賞中、観客は喪失という普遍的な恐怖と向き合うことになるだろう。しかし、その先にあるのは、ただの悲しみではない。映画が描き出すのは、悲しみを受け入れ、再び前へ進むための、奇妙で、そして温かい再生のプロセスだ。キャンバスが真っ黒に染まる時に不思議と回転しているかのような不思議な気持ちに包まれ次のシーンへと誘われる。カラスの声はただの幻聴なのか?一体何なのか観客は翻弄されながら観賞する。言葉にならない喪失の痛みを、カラスの羽のように包み込む本作。劇場でその深淵を体感してほしい。
(文/杉本結)
『フェザーズ その家に巣食うもの』
3月27日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
監督・脚本:ディラン・サザーン
原作:マックス・ポーター『悲しみは羽根をまとって』 (早川書房)
出演:ベネディクト・カンバーバッチ
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
原題: The Thing with Feathers
2025/イギリス/98分
公式サイト:https://feathers-film.com
予告編:https://youtu.be/6ZZI0walsOc?si=DjZc7Og9eReS4kki
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