自分の頭の硬さに横転!!『ロスト・ハイウェイ』

- 『ロスト・ハイウェイ リストア版(字幕版)』
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昨年、アメリカ生まれのとんでもない鬼才、デヴィッド・リンチ監督が亡くなった。ヘビースモーカーだった彼は、歩くときにも酸素吸入を必要とし、最期を迎えたという。そんな彼が煙をたっぷり肺に含んでいた頃、もう少し具体的にいうと『ブルー・ベルベット』のあと、そして『マルホランド・ドライブ』の前につくったのが『ロスト・ハイウェイ』(1997)である。鑑賞後、ぐるぐる考えてはまた迷子になるような不可思議な作品だ。
物語をおおざっぱにまとめると、こうだ。主人公のフレッド(ビル・プルマン)は妻レネ(パトリシア・アークエット)が浮気してるんじゃないかという疑心に苛まれ、妻を殺害。そして刑務所暮らしがはじまってまもなく、牢屋に閉じ込められているはずのフレッドがまったくの別人「ピート(バルタザー・ゲッティ)」とすり替わる! 彼は一体だれなのか、なんですり替わったのか。さらにはピートが恋仲になるアリスは、レネと瓜ふたつだし同じ言葉を発している......と謎が謎を呼び、現実の境目かがずいぶんと曖昧になり、ラストでは時間軸までぐわんと歪む。
一つひとつの謎に引っかかると、すぐに迷子になる。たとえばフレッドとピートの前に現れる、トラウマ級に恐ろしい白塗りのおじさん(ロバート・ブレイク)がいる。二つの場所に同時に出没できる存在だ。なぜだ!?に一瞬とらわれるが、彼がそもそも何を象徴するかを考え直してみると、ぽっと答えのようなものが浮かんでくる。見る角度を変えたりあるところからズームイン・ズームアウトしたりしているうちに、ぽつぽつと物語が輪郭を帯びてくる(ような気がする)のだ。
と得意げにいいつつも、自分の頭の硬さには横転しっぱなしである。そしてせっせと「わかろう」としているうちに、なんでここまでわかりたいのか、どこまで掘り下げたら「わかった」ことになるのか......と、わかることへの疑問まで生まれ、はめられた!と勝手に思うのであった。
(文/鈴木未来)

