もやもやレビュー

まったく先が読めない頭脳戦『フェイクアウト!』

『フェイクアウト!』 6⽉20⽇(金) ヒューマントラストシネマ渋⾕ほかにて全国順次公開

今回紹介する『フェイクアウト!』は、今までにない二転三転を楽しめる作品となっている。私たちの生活から切り離せないものになりつつあるAIを題材に、AIの予想をも上回るような人間同士の騙し合いから目が離せない作品だ。

IT企業の警備員として働く高島誠人(三浦獠太)は、父親が残した多額の借金を知らぬ間に相続し、返済に追われていた。付き合って半年になる恋人・清美(呉城久美)の誕生日にプロポーズをするつもりの誠人は、返済のめどが立たず途方に暮れていた。知人の桝井(田中優樹)から「カネになる仕事」を依頼され、勤務先のIT企業で厳重に保管されている"機密データ"を持ち出す。自分の手中にあるデータにはかり知れない価値を感じた誠人は、桝井に対して報酬を2000万円に増額するよう要求する。
だが、誠人の要求に激高した桝井は誠人の妹・由衣を誘拐する。妹の命はデータと引き換えになってしまった。誠人が取引現場に到着すると、桝井の遺体が転がっていた。目の前の事態がのみ込めず混乱する誠人は、現場に駆けつけた警察官に身柄を拘束されてしまう...。ここから騙し合いの種明かしが始まり、思いもしない展開を目撃することになる。

【根本圭司役(石田明)】FO_1.jpg

本作のメガホンをとったのは堀江慶監督。真木よう子主演のベストセラー『ベロニカは死ぬことにした』で商業映画監督デビューをした。その後もプロモーションビデオやゲームCGの監督、舞台の演出も手がけるなど多岐にわたり活発な活動をしている。監督の経歴を調べて驚いたのが、俳優をしていた時代があり、なんとスーパー戦隊シリーズ『百獣戦隊ガオレンジャー』でガオイエロー役としてレギュラー出演していたようだ。監督の過去作もどれも面白く、時代の流れに敏感についてきているので今後の作品にも期待したい。

そして主演の三浦獠太は、ここ数年よく見る顔になってきた俳優。元サッカー日本代表・三浦知良さんの息子としても有名。現在放送中のNHK大河ドラマにも、主人公のライバルの息子役として出演中。本作では、借金の返済に奔走していたはずが、自分の知らないところで実は大変な事態に巻き込まれているという主人公を熱演。唯一といえるほど普通の人で、悪いことをしようとしてもうまく出来ないあたりがクスッと笑えて、生き方は下手かもしれないが憎めない主人公だった。

浅川梨奈が演じた役は深くは語れないが、とにかくゴスロリ姿で街を歩き回るという面白い役だった。元アイドルということもあり、ゴスロリ衣裳もきっちりと着こなしていた。マンガの実写化作品には欠かせない存在になりつつあるが、こういった謎めいた役も器用にこなし、今後どのような作品に出演するのか目が離せない。

本作を鑑賞してから、自分の身に起こるひとつの出来事がとんでもなく運命的であったり、「こんなことあるか?」というくらいどん底に落とされたり、人生山あり谷あり誰にでもあると思う。山に登った人を落とそうとする人や、谷から助けようとする人が現れたら、人生って私たちの想像できないくらい楽しいはず! そんな善悪が混在する世界で、今必要なのは頭脳戦に勝つ力なのかもしれないと思った。

ひとつの作品なのに複数の作品をまたいで鑑賞したかのような満足感が得られる作品だった。そして、本作は鑑賞後に全てを知ってからもう一度見たくなる作品!ラストの展開を知ってから鑑賞することで作品の見え方も変わって本当に面白い。正直、鑑賞中に次の展開を予想しようと思っても全く当たらないことの連続で、ここまで予想が当たらない作品も珍しくすごく新鮮だった。これは劇場で頭フル回転で鑑賞してほしい。

(文/杉本結)

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【ゆい役(浅川梨奈)】FO_61.jpg

『フェイクアウト!』
6⽉20⽇(金) ヒューマントラストシネマ渋⾕ほかにて全国順次公開

監督:堀江慶
出演:三浦獠太、浅川梨奈、矢柴俊博、久保田秀敏、呉城久美、田中優樹、葉月ひとみ、石田明(NON STYLE) 、永澤俊矢、菅田俊
配給:ギグリーボックス

2025/日本映画/114分
公式サイト:https://fakeout-movie.com
予告編:https://youtu.be/4ON94Fc5ias
©2025 Colossus Pictures LLC

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