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主人公の正体は凶悪な殺人鬼?『レオ:ブラッディ・スウィート』

『レオ:ブラッディ・スウィート』 6月20日(金)より新宿ピカリーほか全国公開

またしても面白いインド映画を発見したので紹介したいと思います。本作『レオ:ブラッディ・スウィート』は、上映時間が161分。やっぱりインド映画は長いと感じてしまい、いつ観ようかタイミングに悩むことが多いです。映画館で観る際も、ちょうどいい時間を探すのが大変なのは私だけではないはず。そして、インド映画はR指定作品が多い印象がありますが、本作もR15+指定。戦闘シーンがかなり残虐で、そのための規制だと思われます。

舞台はインド北部、ヒマーチャル・プラデーシュ州の町・テオグ。カフェを営みながら動物保護活動も行うタミル人・パールティバンは、妻と2人の子どもと共に穏やかに暮らしていました。ところがある日、凶悪な強盗団が街を荒らし始め、夜、パールティバンのカフェにも侵入。現金を渡してやり過ごそうとした彼ですが、娘と女性スタッフに危害が及びそうになったため、反撃に出ます。
驚異的な身体能力で次々と5人の敵を仕留めるその姿に、周囲は唖然。そして事件が報道されると、複数の闇の勢力が彼を標的とし始めます。中には彼を"レオ"と呼び、執拗につけ狙う者たちも......。果たして"レオ"とは何者なのか?

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私がこの作品を紹介したい!と思った理由は、監督の手腕に将来性を感じたからです。161分が長く感じないくらいに脚本が巧み。伏線を丁寧に回収してラストへとつなげる展開は見事の一言。さらにアクションも見応え十分で、主人公が魅力的でとにかくカッコイイ!

演じたのは、タミル映画界のトップスター、ヴィジャイ。そんな主人公を演じたヴィジャイは、本作で初めて知った俳優でした。「今後の作品も観たい!」と思った矢先、彼が自身の政党を立ち上げ、俳優業を引退して政治の道へ進むと発表していたことを知り、驚きと共に少し寂しさも感じました。2026年に公開予定の『Jana Nayagan』が俳優としてのラスト作品になるとのこと。彼の新たな道を応援したい気持ちでいっぱいです。

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物語の主軸は、「レオとは誰なのか?」という謎。パールティバンは「自分はレオではない」と語りますが、周囲の疑念は深まるばかり。夫の過去に疑念を抱くことになる妻・サティアの演技が本当に素晴らしく、息をするのも忘れて見入ってしまいました。年代や立場によっては、息子の視点や別の登場人物に感情移入して観ることもできる、多層的な構成も魅力です。

観客の"主人公の正体を知りたい"という探究心をくすぐりながらも、答えはラストまで明かされません。だからこそ、ラストを知った後にもう一度観たいような、そんな魅力にあふれた作品です。
レオの正体――ぜひ劇場でその目で確かめてみてください。

(文/杉本結)

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『レオ:ブラッディ・スウィート』
6月20日(金)より新宿ピカリーほか全国公開

監督:ローケーシュ・カナガラージ
出演:ヴィジャイ、トリシャー・クリシュナン トリシャー・クリシュナン、サンジャイ・ダット、アルジュン・サルジャー
配給:SPACEBOX

原題:LEO
2023/インド/161分
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/leo/
予告編:https://youtu.be/LWVNRb8M9Z4
©Seven Screen Studio

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