もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2025年05月号

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』 6月27日(金)全国公開

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』四十六回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
06月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『We Live in Time この時を生きて』(06月06日公開)
公式サイト:https://www.wlit.jp/
予告編:https://youtu.be/hdtFrIrjd08?si=rgvqdHdPsqx5W0WR

★メイン1.jpg 『ブルックリン』のジョン・クローリー監督が手掛け、A24が配給権を獲得したことで注目された『We Live in Time この時を生きて』。
 余命わずかと知った一流シェフのアルムート(フローレンス・ピュー)とそのパートナーであるトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)。アルムートたちは幼い娘に話したいことがあると伝えて、二人が出会った時から現在までを話していくようです。
「好き嫌いに関わらず、時間は限られている」「何を焦っているの?」「心配なんだ。現実を見ると君に恋しようとしている」という二人のやりとりや、病室に一緒にいる二人が映し出され、すぐに同じ構図でアルムートが坊主頭になっている姿などを予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。と言いたいところなのですが、やはりアルムートが残りわずかな時間をトビアスと娘と共に過ごし、亡くなってしまう終わりなのでしょう。
「時間を浪費する様な治療には興味がない」「なぜリスクを取る?」「忘れられたくない」という二人のセリフがすべてなのかもしれません。
 恋をして家族になった。だけど、死んでしまうことは避けられない。それは誰にだって起こることであり、僕たちはやがて消えてしまいます。この映画を観ると今誰と居たいのか、この先誰と居たいのかを考えるきっかけになるのではないでしょうか?

★メイン2.jpg

『We Live in Time この時を生きて』
6月6日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
© 2024 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

『親友かよ』(06月13日公開)
公式サイト:https://notfriends.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=g8ExpKJ3ujs

親友かよ_main.jpg 世界各地でヒットしたタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を手がけたチーム再結集した『親友かよ』。
 高三で転校してきたぺーは隣の席になった陽気なジョーから話しかけられるが、「うるさいな。卒業したら会うこともない」と冷たい態度をとる。そんな矢先、ジョーが事故で亡くなってしまう。
 大学進学の近道として「短編映画コンテスト」があると知ったペーはジョーを親友だと偽り、「僕の愛するものは2つ、親友とそして映画」と生徒の前でスピーチをしています。そのことをきっかけに撮影スタッフの仲間を見つけ、撮影を開始する様子も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。「ペーは転校して1ヶ月なのに、どうやってジョーの親友に?」と撮影担当のボーケーに聞かれている場面や、生前のジョーが「いつから親用と呼べると思う? 秘密を打ち明けた時からだ」とぺーに話しているシーンがあり、実はペーがなんらかのジョーの秘密を知っている可能性もありそうです。
 ジョーが死んでしまい、彼のことをペーたちが映画にすることでその不在が物語の全面に出てくることになるでしょう。となれば、『ゴドーを待ちながら』と同じ中心が空虚、不在というパターンです。こういう構造であれば、傑作になる可能性が高いです。彼らがどんな映画を撮るのかを確かめに行きませんか?

親友かよ_sub1.jpg

『親友かよ』
6月13日(金)より新宿シネマカリテ、渋谷シネクイント、池袋HUMAXシネマズほか全国順次公開
配給:インターフィルム
©2023 GDH 559 AND HOUSETON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

『メガロポリス』(06月20日公開)
公式サイト:https://hark3.com/megalopolis/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=mpSZoVlTIrk

Megalopolis_Main.jpg『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』のフランシス・コッポラ監督が構想40年をかけた集大成となる映画『メガロポリス』。
 超高層ビルの最上階付近の外側で「時よ 止まれ!」とカエサル・カティリナ(アダム・ドライバー)が告げると、下を走っていた車が止まり、彼が「動け」と合図すると再び動き出すシーンを予告編で見ることができます。理想都市「メガロポリス」は現在の人類の都市よりもはるかに、そして高度に発展した夢の未来都市のようです。
「夢などいらない。必要なのは救済だ」というセリフもあり、貧しい人たちが集まって抗議している姿もあります。
 ここからは妄想です。予告編を見る限り、まさに夢に見たようなSF的な未来都市の映像と絢爛豪華さに圧倒されます。しかし、その中には「我々の住む世界は唯一無二なのか?」というセリフがあります。もしかしたら、この華やかすぎる世界はカエサルや一部の権力者たちの空想の産物かもしれません。
 実はカエサルはなんらかの出来事で昏睡状態になっていてずっと夢を見ている。そのイメージから未来都市を作ろうとしている人たちがデータを取っているような、あるいは『マトリックス』のようなオチかもしれません。違う角度で言うと彼自身はさらなる未来からやってきて過去の歴史を修正しようとしている存在というのはどうでしょうか?

Megalopolis_1.jpg

『メガロポリス』
6月20日(金)日本公開&IMAX®上映
配給:ハーク、松竹
© 2024 CAESAR FILM LLCALL RIGHTS RESERVED

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』(06月27日公開)
公式サイト:https://www.detchiagemovie.jp/
予告編:https://youtu.be/K8szCClvsEQ?si=-NKBBb-E8mbPbsvF

メイン(ロゴ無し).jpg ジャーナリストの福田ますみがルポルタージュとして上梓した書籍を元に、三池崇史監督が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』。
 小学校教諭の薮下誠一(綾野剛)が児童の氷室拓翔に対して、「生きてる価値がないから死んだほうがいいかも」「死に方教えてあげようか」という酷い言葉を発し、両耳を掴んで体を持ち上げるなどの暴力を振るっているシーンを予告編で見ることができます。
 保護者集会で拓翔の母の律子から「自殺を強要されたんですよ」と言われると、「してもないこと謝罪できません」と答える誠一の姿があります。やがて週刊誌に実名報道され、民事訴訟へ発展していくようです。
 ここからは妄想です。誠一は「でっちあげ」だと法廷で完全否認するようです。気になるのは予告編にある「これは真実に基づく物語」という言葉が「これは真実を疑う物語」と変化することです。
 誠一が拓翔にどのような体罰や暴力を振るっていたのか、母親が言うような事実は果たして本当にあったのか? 週刊誌の報道によって加速する誠一と家族の誹謗中傷やいやがらせをした人たちは? この事件は今も僕の前に形を変えて起きていること本質は変わらないと思わされます。人の数だけ「真実」があるなら、これは三池監督が私たちに見せたい「真実」があるはずです。それを確認しに行こうと思います。

サブ①.jpg

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
6月27日(金)全国公開
配給:東映
ⓒ2007 福田ますみ/新潮社 ⓒ2025「でっちあげ」製作委員会


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム