下品で笑えるが酷く残酷な終わり方『ヴィダル・ザ・ヴァンパイア』

- 『ヴィダル・ザ・ヴァンパイア』
- トーマス・ベルク,トーマス・ベルク,ブリッグ・スクレティングラント,ディラン・シェッティーナ,キム・ソーンデルホルム

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地方の農場で働く地味な男が神(?)の力で強大な能力を得るも内面が変わらないゆえに何も得られず終わるという話をエグい下ネタとともに描いた本作は、面白いような面白くないような、自身の感想すら分からなくさせる内容だった。酷すぎる下ネタに大いに笑ったのだけど、視聴を終えて「果たしてこれは笑っておしまいで済ませて作品なのだろうか?」とか考え出してしまい、気分は複雑になる。
33歳独身で田舎住まいの農夫ヴィダールが主人公。ひげを生やしサングラスをかけ防護服を着た、見るからに異様という姿で精神科を訪れる場面から始まる。
ヴィダールは子供の頃から人にバカにされ、今も母親の介護と豚の世話に明け暮れ自身の生活に嫌気が差した時、夢の中にイエス・キリストが現れ救われたければ自身の陰茎を咥えろと命じられたと話す。そこから体調不良に襲われ、日光を浴びた途端に大やけどを負い死亡したという。
しかし葬儀で吸血鬼としてよみがえり、キリストの指示で母親を殺しその血を吸う。そして、キリストとともに活動をともにすることに――というあらすじ。果たしてこれをあらすじと呼んでいいのか分かりかねるが、実際ヴィダールの回想だけで物語が進むので仕方がない。
キリストはヴィダールに女性を襲って血を吸うように命じるが、内気で女性経験のないヴィダールは躊躇するだけ。キリストは仕方なくヴィダールにコールガールをあてがい夜の街を堪能する。そんな暮らしで自信を付けたのか露出度の高い女性を街で見かけ、相手の家に侵入するも女性の彼氏から返り討ちに遭う。
反省したヴィダールは依存症のグループセラピーに参加し「神に身を委ねなさい」という助言を受け「イエスに委ねたことが最大の過ちだったんだ」と吐き捨て脱退。
そんな時、街中で自分をバカにしていた幼馴染の男性と会い、強引に誘われ飲み屋へ。眉をひそめる下品な質問をヴィダールに浴びせた後、彼が結婚していないことを知ると「お前は一生童貞さ」とあざ笑われる。そこにキリストが現れ彼に「右の頬を打たれて左まで出すのか?」とお前が言うなというセリフを述べ、やり返すよう訴える。
ヴィダールは幼馴染の男性を殺し、ふと我に返る。こんな人生に意味はないとキリストに吐き捨て、キリストとたもとを分かつことを決意する。そしてコールガールに恋人を演じてもらったヴィダールは......というところでカウンセラーから時間になったことを告げられ次の予約を入れて退出。
ヴィダールはすべてを終わらせようと防護服を投げ捨て外へと飛び出していく。吸血鬼の彼は当然太陽に焼かれ「神様、やっぱり助けて」と訴えエンドロールへ。
全く救いのない男がすべてをひっくり返せる特別な力を得ても、扱う能力もないからやはり救いがないというオチは、ある意味酷く残酷で笑いとの落差に心を削られるものがある。
(文/畑中雄也)

