バカエロB級ホラーかと思いきや最悪の後味『YUMMY/ヤミー』
- 『YUMMY/ヤミー(字幕版)』
- ラース・ダモワゾー,マイケ・ネーヴィレ,バート・ホランダース,ベンジャミン・ラモン,クララ・クリーマンズ,アニック・クリスティアンス
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下品なエロとグロの正統派B級ホラーかと舐めていたら視聴後にとても嫌な気分になるという意味で予想を超えてきた。冒頭のバカ丸出しな雰囲気とラストのバッドエンドの落差に困惑しつつもいい意味で期待を裏切られた。ゾンビに感染する設定こそガバガバなのにゾンビが暴れ回るシーンはグロテスクで、バカエロとのギャップも印象に残る。
胸が大きすぎることにコンプレックスを抱き美容整形外科で胸の縮小手術を受ける主人公アリソンと同伴したその恋人のミカエル、アリソンの美容整形に同伴したついでに若返りの手術を受けようとするその母親の3人が本作の主な登場人物だ。
3人はクリニックに着き手術を開始しようとした瞬間、ゾンビ化した女性が現れパニックに。ミカエルは混乱の中で感電し気絶し、母親は麻酔が効いて昏睡中。母親を連れて逃げる主人公の胸が異様に強調されている時点で「あぁ、エロとバカを合わせたホラーかぁ」と高をくくっていた。
体が半分にちぎれたゾンビに追い回されるアリソンたちは途中で母親がゾンビに噛まれるなど、この辺りはゾンビ映画のお約束としてペニス増大手術を受けた男が出てきて股間に火が燃え移り線香花火のように落ちたり、男が苦痛で駆け出すなりゾンビに食われたりとバカバカしいシーンが延々と続く。
逃げる際に離れ離れになった恋人のミカエルは目を覚ますなり標本だったカエルのゾンビに襲われ院長室に逃げ込むと、院長と秘書が書類を燃やしている最中。
院長室で院長らと一緒に逃げ出したミカエルは途中でアリソンたちと合流したものの院長に母親のゾンビウイルス感染を指摘され殺害されそうになる。しかし母親が吐いた吐しゃ物に触れた院長自身も感染したので突如ワクチンを製造する方向に。その中でゾンビが発生した理由として老化を止める薬品を開発していたら誤ってゾンビウイルスができたと説明。何を言っているのか分からないが人どころか標本のカエルですらゾンビになるには理由が必要なのだろう。もう少しそれっぽい理由は思い浮かばなかったのだろうか。
そんな説明をしている途中で院長の体調が悪化しゾンビ化の兆候を見せたと思ったら院長秘書が斧で殺害。感染していた母親も完全にゾンビとなる。涙ながらにアリソンが母親の頭を斧でたたき割り逃亡を続ける。逃げる過程でミカエルはゾンビに噛まれ感染。窓の外を見ると軍隊が現れ、救助を求めて駆け出した患者はいきなり射殺され、主人公たちは軍隊が救助に来たのではなく排除に来たのだと察する。
ゾンビが来ても軍隊が来ても殺されるだけと観念した主人公たちは下水道を通り外への脱出を図ろうとする。ミカエルが身を挺して主人公を逃がし、外に出た主人公は車でゾンビがあふれる場所から逃走しようとする。しかし下水道から自力で脱出した恋人のミカエルを轢いてしまいショックでハンドルの操作を誤り事故死する。
オチがつかなかったので登場人物を全員死亡させたのか?という疑問もあるが、終盤の後味悪い雰囲気に似つかわしい終わり方で視聴していても違和感は覚えなかった。B級映画と侮って予想を裏切られるからこそB級映画あさりがやめられない。
(文/畑中雄也)