バレエに人生を捧げたバレリーナの実話『JOIKA』

『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』 4月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他 全国公開中
本作は世界最高峰のバレエ団"ボリショイ・バレエ"を舞台に、完璧なプリマになることに取りつかれたアメリカ人バレリーナの狂気に満ちたサイコ・サスペンス。
青い衣装をきたバレリーナにピンク色の背景という反対色がなんとも印象的なオープニング。いつまでも周りつづけるバレリーナ。その回転に終わりはなくたたみかけるようなバックサウンドからも、今から何を観るのか不安な気持ちが増幅されていく。
15 歳のアメリカ人バレリーナ、ジョイ・ウーマック(タリア・ライダー)の夢はボリショイ・バレエ団のプリマ・バレリーナになること。夢を持ち単身ロシアに渡り、アカデミー生となったジョイを待ち構えていたのは、常人には理解できない完璧さを求める伝説的な教師ヴォルコワ(ダイアン・クルーガー)の脅迫的なレッスンだった。過激な減量やトレーニング、日々浴びせられる罵詈、雑言、ライバル同士の蹴落とし合い。ジョイの精神は徐々に追い詰められていき----。
本作は実話であるというテロップが出てくるので、実話と知りながら鑑賞していたのに鑑賞後には「これが本当にあったの!?」と思うくらいにドラマチックなストーリーだった。2012年と少し前の話で、主人公のジョイご本人が振付師として本作に携わっている。役者が演じやすいように振り付けを考えたそうだが、本人を目の前に演じることができる役者もプロのダンサーである鑑賞後に知って驚くとともに、作品の完成度の高さや緊張感はこうやって作られたのかと納得した。
主人公ジョイを演じたのは、スティーブン・スピルバーグ監督『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021年)に出演したタリア・ライダー。これからますます活躍すること間違いなしの女優の一人である。彼女自身ダンスが得意だけれど、コンテンポラリーダンサーなのでバレエの基礎はあったが撮影の1年前からバレエのレッスンをして準備していたようだ。日本人で考えると土屋太鳳に近い立ち位置の女優さんだと思う。
アメリカ人であることが理由でどんなに努力し、上達しても世界最高峰のバレエ団"ボリショイ・バレエ"に選ばれることがないという現実。実力以外の理由に、はがゆい気持ちでいっぱいになった。そんな気持ちになった時に、彼女のつま先からにじむ血を思い出すと悔しい気持ちでいっぱいになった。そんな逆境の中でも彼女は諦めることなく選出されるためにただ必死だったのだと思う。彼女がとった行動には驚きもあったけれど「バレリーナになること」は本当に彼女の人生のすべてなのだと伝わってきた。
『ブラック・スワン』を彷彿とさせるほどによくできた作品だった。本作、ぜひ大きなスクリーンで鑑賞して欲しい。バレエに詳しくない私でも楽しめる作品となっていた。
(文/杉本結)
『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』
4月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他 全国公開中
監督・脚本:ジェームス・ネイピア・ロバートソン
出演:タリア・ライダー、ダイアン・クルーガー、オレグ・イヴェンコ
配給:ショウゲート
原題:JOIKA
2023/イギリス・ニュージーランド/111分
公式サイト:https://joika-movie.jp
予告編:https://youtu.be/NnXFsJxSdGY
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