もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2025年05月号

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』 (5/23公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』四十五回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
05月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『サンダーボルツ*』(05月02日公開)
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/thunderbolts
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=T154F1F40VQ

_サンダーボルツ__メイン①横.jpg 「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」作品に登場した"全員ワケあり"なヴィランたちを主役にした『サンダーボルツ*』。
 NY市民を瞬く間に消し去ってしまう謎の敵が出現。世界は再び大きな脅威と直面するが、今まで世界を救ってきてくれたアベンジャーズはなぜか姿を現さなかった。
 そんな中、その脅威に立ち上がったのはかつてヒーローたちと敵対した過去をもつウィンター・ソルジャーことバッキーだった。彼が仲間に誘ったのは悪事を犯した過去を持つエレーナ、USエージェント、レッド・ガーディアン、ゴース、タスクマスターたちだった。
 ここからは妄想です。予告編では「誰ひとりヒーローじゃない」「全員悪事を犯した」「過去から逃げられない」「今ケリをつけるか、一生抱えるか」という彼らのセリフも聞くことができます。ヴィランといえど、彼らも一人の人間としての苦悩を抱えているのが伝わってきます。たった一回の失敗が許されないような現在だからこそ、罪を背負った彼らの再生の戦いは予告編を見るだけでも胸に訴えてくるものがあります。
 しかし、アベンジャーズの面々がいないのはなぜでしょうか? もしかしたら謎の敵は彼らの無意識の悪意が何かの力で具現化や結晶化したもので、ヴィランである彼らしか戦えないという設定かもしれません。

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『サンダーボルツ*』
5月2日(金)日本公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2025 MARVEL

『新世紀ロマンティクス』(05月09日公開)
公式サイト:https://www.bitters.co.jp/romantics/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=3JOvTIKtOtE

main.jpg ジャ・ジャンクー監督が総製作期間22年をかけた映画『新世紀ロマンティクス』。
「今日はどんな気分ですか?」と人型ロボットに聞かれている女性のチャオはマスクをしている。「すみません。表情が読み取れません」と言われた彼女はマスクをずらしてロボットをまっすぐに見る様子を予告編で見ることができます。
 物語はミレニアムが幕開けした頃から現在に繋がっており、今作ではジャ・ジャンクー監督が手掛けた『青の稲妻』『長江哀歌』などの本編映像だけでなく、ドキュメンタリー映像も使用されているようです。
 ここからは妄想です。予告編では若かったチャオが泣きながらバスを飛び出していく時に俯いている男性を見ることができます。急激的な経済発展と新しい文化が押し寄せた中国で離れ離れになったこの男女が、約二十年の間に出会ったり別れたりを繰り返す物語なのでしょう。
 作中にドキュメンタリー映像が差し込まれることで、特に中国の観客にとって他人事ではない映像になっているはずです。日本に住む私たちはこの作品にかつてのバブル経済の時代を見るのかもしれません。
 またチャオは監督の妻であり、これまでも彼の作品で主演を務めてきたチャオ・タオが演じています。ジャ・ジャンクー&チャオ・タオ夫婦が撮ってきた中国を追体験できそうです。

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『新世紀ロマンティクス』
5/9(金)より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!
配給:ビターズ・エンド
© 2024 X stream Pictures All rights reserved

『かくかくじかじか』(05月16日公開)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/kakushika/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=gHwMfnhcu_w

JP-photomain-KAKUSHIKA.jpg 「マンガ大賞2015」を受賞した東村アキコの漫画作品を東村自身が脚本に書き起こし、今作の主演である永野芽郁主演作『地獄の花園』を手掛けた関和亮監督が映像化した『かくかくしかじか』。
 漫画家を夢見る高校生の明子(永野芽郁)は絵を上達させるために絵画教室に通い始める。そこにはスパルタ絵画教師の日高先生(大泉洋)がいた。「全然ヘタクソです。クソ、クソ、クソ」と明子の描いた絵にダメ出しをする日高の姿を予告編で見ることができます。
「描いたことあるからなんや。何百回と描け」「林、画家になれ。お前ならなれる」と厳しいながらも日高は明子に可能性を見出していくようです。
 ここからは妄想です。「私はずっと漫画家になりたいんよ」と明子が日高に涙ぐみながら話すシーンも予告編で見ることができます。やがて東京で漫画家となった明子はかつて日高先生が「いいから描け」と言っていた本当の意味を知ることになるようです。
 この師弟関係を見ると観客も自分にとっての先生や道を示してくれた人を思い出すのではないでしょうか? 道に迷っていたり、今悩んでいることがある人は自分にとっての先生や師匠に会いたく作品かもしれません。
 それにしても永野芽郁と大泉洋が向き合う映像だけでおもしろそうだと思える説得力って一体なんなんでしょうね?

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『かくかくしかじか』
5月16日(金)全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
©東村アキコ/集英社 ©︎2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(05月23日公開)
公式サイト:https://kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=uUBCIILq7Hg

★メインA_岸辺露伴は動かない 懺悔室.jpg NHKドラマ「岸辺露伴」シリーズ、その劇場版二作目は人気エピソードを全編ヴェネツィアでロケを敢行した『岸辺露伴は動かない 懺悔室』。
 人の心や記憶を本にして読むことができる「ヘブンズ・ドアー」という能力をもつ人気漫画家・岸辺露伴(高橋一生)はヴェネツィアの教会である男(大東駿介)の懺悔を聞くことになる。その男はあることがきっかけで「幸せの絶頂の時に"絶望"を味わう」という呪いをかけられたという。ある日、男は無邪気に遊ぶ娘の姿に幸せを感じてしまう。そんな彼の前に死んだはずの男が現れて、ある試練に挑まされることになるようです。
 ここからは妄想です。「爪が甘かった。こんなことも予測できないなんて」という露伴のセリフも予告編にあり、どうも試練の先にもなにか別の展開が待っていそうです。しかし、幸せの絶頂の時に"絶望"を味わうためには、まず幸せだと思える環境や関係性が必要です。"呪い"と"祝い"と表裏一体であり、露伴はなんとか反転させようと能力を使うのでしょう。
 最後は男の家族がどんどん不幸になっていくと"呪い"が解かれていき、死んだ男も消える。そこにはまだ"希望"だけは残されているというラストかもしれません。いや、男にとって最大の"絶望"は妻と娘に見捨てられて一人で生きる人生かもしれません。

★メインB_岸辺露伴は動かない 懺悔室.jpg

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』
5月23日(金)ロードショー
配給:アスミック・エース
© 2025『岸辺露伴は動かない 懺悔室』製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

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