もやもやレビュー

東京オリンピックで歌ってほしかった『ボヘミアン・ラプソディ』

ボヘミアン・ラプソディ (字幕版)
『ボヘミアン・ラプソディ (字幕版)』
Bryan Singer,Rami Malek,Lucy Boynton,Gwilym Lee,Ben Hardy,Joe Mazzello,Aidan Gillen,Tom Hollander,Mike Myers
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2018年に記録的な大ヒットとなったクイーンの伝記的映画『ボヘミアンラプソディ』。何でだったかよく覚えていないが、公開日初日の朝イチの回をわざわざ予約して観た。クイーンにはそれまでまったく興味はなかった。何ならダサいバンドの代表とすら思っていた。

だが、僕はスクリーンに釘付けになった。なぜなら、映像に出てくるフレディ・マーキュリーはひたすら傍若無人で、自分勝手で、そして弱くて情けない普通の人間として描かれるのに、流れる楽曲が意外にもカッコよかったからだ。毛むくじゃらでタンクトップのイメージからはかけ離れたポップな曲。特に表題曲の「ボヘミアン・ラプソディ」は、ピアノの弾き語りから始まり、ギタやドラムが重なり、ギターソロの間奏があったと思えばいきなりオペラアレンジに突入。こんな実験的な音楽がイギリスで1位になるほど売れたとはヤバすぎる!ダサいなんていってごめんなさい。帰ってからストリーミングアプリで聴きまくったことはいうまでもない。

あと、気に入っているシーンは、フレディが、奥さんに
「実は俺、バイセクシャルなんだ」
と告白するシーン。奥さんから間髪入れずに
「あなたはゲイよ!」
と切り返され、グーの音も出ないフレディ。この映画で一番しんみりするシーンだ。

残念ながらフレディは90年代当時不治の病と言われていたエイズで亡くなってしまったが、現代では、発症を遅らせられるまで医療は進歩した。もし、フレディが生きていたら、東京オリンピックでぜひ歌ってほしかった。千駄ヶ谷から新宿2丁目も近いし。

(文/神田桂一)

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