もやもやレビュー

粗は多いが頭を空っぽにして楽しめる『ブラインデッド』

ブラインデッド(字幕版)
『ブラインデッド(字幕版)』
ジェシー・トーマス・クック,リヴ・コリンズ,ケヴィン・レヴィー,アダム・シーボルド,リヴ・コリンズ,ライ・バレット
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 出産間近の妊婦と盲目の男という、ゾンビから逃げるには致命的な短所を持つ2人が互いに協力して危機を切り抜けようとする話はベタではあるがB級映画で要らない斬新さを打ち出されても大惨事にしかならないので却って好ましい。そのほか色々な疑問点をすべてフル無視してエンディングまで突き進むので盛り上がりには欠けるものの視聴がストレスにならない。そもそもエンタメで視聴がストレスになる時点で間違っているが。

 あらすじは単純明快で、盲目の男ベンは手錠をはめられた状態で救急車の中で意識を取り戻したが自分がなぜこのような状態なのか記憶がない。車の外に出て助けを求めるが人の気配がないため車内の無線を何とか探し出しSOSを発するも反応がない。そこで何かに襲われる気配を感じ救急車から脱出し空き家へ逃げ込む。一方、ベンのSOSを受信した妊婦のマーラはパトカーで救助に向かう途中で血みどろの挙動不審な女性を発見。その女性にパトカーを奪われたマーラもベンが逃げ込んだ空き家にたどり着き――という内容。

 方や軽快に動けるが目は見えず、もう一方は目こそ見えるが出産間近の妊婦のため思うように身動きが取れずと、短所しかない。ただ、その設定が下手なアクションなどの欠点を隠しているのだから十分に作品に没入できる。もっともベンはゾンビに襲われてもやみくもに斧やスコップを振り回して勝利するので緊張感は今一つだが......。

 マーラは救急車へ向かうも車はバッテリー切れのため稼働せず。ただ車内でベンのカルテを見つけ、そこには放火殺人の容疑者という記載が。ここで何か葛藤するシーンでも出るのかと思いきや、ゾンビに襲われている状況のせいかスルー。

 再び2人は合流し大きな工場へ逃げ込むも多くのゾンビに襲われるのだが、途中からベンは目が見えるようになるしマーラは産気づいているのに銃をぶっ放すし設定が崩壊していく。最後にベンはマーラを守るため工場のドアを閉めてゾンビを次々と射殺。無事脱出したマーラは偶然出会った車に保護され、車内で出産してエンドロールへ。ベンは微笑みながら息絶えている聖人のような最期だし放火殺人の容疑者という設定は何も生きていない。しかし本作はB級映画なので伏線回収を望むのは贅沢というものだろう。

 82分という尺も特に中だるみすることはなく、粗は多数見つけられるが笑って突っ込める程度に収まっている。何も考えずエンタメとして見る分には及第点ではないだろうか。

(文/畑中雄也)

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