もやもやレビュー

多毛症の女性の物語から考える多様性『ロザリー』

『ロザリー』 5月2日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開

突然ですが、コンプレックスってありますか? 誰にでも多かれ少なかれあるコンプレックス。そのコンプレックスが多毛症だった女性の物語を今回は紹介したい。

周囲からの拒絶を恐れ、毎日欠かさず髭を剃り体毛を隠して生きてきた主人公ロザリー。父親の勧めで持参金目当てのアベルと結婚するが、秘密を知った彼からも避けられてしまう。しかし、アベルのカフェに訪れた客の一言で髭を伸ばすことを決意したロザリーは羞恥心から解き放たれ、ありのままの自分を取り戻し、初めは協力的ではなかったアベルも次第に献身的な彼女に惹かれていく。その姿を一目見ようと店は繁盛するが、小さな田舎町では評判も噂も広まってしまう。愛されたいと願うロザリーは自分らしさを信じ抗い続けようとするが----

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本作は19世紀末のフランスが舞台ということで、考え方も今とは全く違った時代の物語。ロザリーは自分が見世物になってでも店に客が来ることを望み、髭を生やした姿で店にでていた。彼女にとっては長年隠してきた秘密を公にすることは心の解放でもあったのだろう。実際、私たちは誰一人同じ人は存在しない。それでも、大きく自分と違うところがある人のことを異物のように扱ってしまうということは過去にも多くあった。今回のロザリーもその一例のようだった。街の人から酷い扱いを受けたり、他の人なら許されることも、ロザリーとアベルの夫婦は許してもらえなかったり、偏見の恐ろしさや悲しさを感じた。

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つらい思いをするシーンもあるけれど、全編を通してロザリーは自分自身を愛して心のままに素直に行動し、自分自身の考えを大切にしていた。そんなロザリーはとても意思の強い女性だったように思う。また、最初は彼女の秘密を知り戸惑うけれど、アベルも彼女の内面を知って向き合うことで惹かれていく。ロザリーの外見ではなく、内面に惹かれていくことが少しずつ変化する態度や仕草から伝わってきてとても素敵だった。
題名からも一人の女性の物語だが、その横に支える旦那さんがいる、夫婦の物語だったように鑑賞後感じた。ラストシーンのとらえかたも鑑賞後に誰かと話したくなる終わり方だった。夫婦やパートナーと一緒に鑑賞してみてはいかがでしょうか?

(文/杉本結)

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『ロザリー』
5月2日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開

監督・脚本:ステファニー・ディ・ジュースト
出演:ナディア・テレスキウィッツ、ブノワ・マジメル、バンジャマン・ビオレ、ギヨーム・グイ、ギュスタヴ・ケルヴェン、アンナ・ビオレ
配給:クロックワークス

原題:Rosalie
2023/フランス・ベルギー/115分
公式サイト:https://klockworx.com/rosalie
予告編:https://youtu.be/G3p0SumJVrw
Ⓒ COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023

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