もやもやレビュー

歴史に翻弄された家族の物語から考える韓国の歴史『1980 僕たちの光州事件』

『1980 僕たちの光州事件』 4月4日(金)全国ロードショー

日本にとって韓国はお隣とも呼べる場所にある国である。そんな韓国で起こった歴史的事件を私たちは深く知ることはない。1980年、45年前に起った光州事件を知っていますか?

この事件を題材とした韓国映画は『KCIA 南山の部長たち』『ソウルの春』『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』と多数存在して、どれも心打たれる作品である。近年、こうして映画でクローズアップされることも増加してきてやっと私はこの事件について調べようと思った。ことの発端は1979年に朴正煕大統領が暗殺されたことから始まる。この人物は第5代から9代まで大統領を務めたが、この間に大統領任期と重任制限を撤廃することで永久執権を図ろうと画策し、独裁者と呼ばれてもいた。彼が命を狙われたのは実は2回目で、1回目では妻が亡くなっている。1980年光州市では戒厳令に抗議する学生や市民によるデモが起き、デモを鎮圧すべく投入された軍部隊と機動隊の鎮圧行為は次第にエスカレートし、多くの人の命を奪う結果となっていく。

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この事件が起こった時に光州市に住んでいたごく普通の家族が、どのように事件に巻き込まれてゆくのかが本作では描かれている。チョルスとヨンヒという幼い子どもが目撃した、まだ理解しきれないけれど目の前で起こる異変が残酷な描写も交えつつリアルに表現されていた。この二人は幼なじみという関係だが、ヨンヒの父親が軍人ということで関係がギクシャクしてしまう。軍人の父親自体、なぜ自分たちが暴力的に拷問をしているのか信念などがあるわけでもないところに人間の恐ろしさを感じた。明確な理由もなく人を殴り拷問している軍人の感覚はおかしくなっていたけれど、自分たちでも感じる矛盾があったようにもみえた。それでも、逆らうことも疑うことも許されない空気がヒリヒリと感じられた。言葉にできない空気感。従わなければ、自分や家族の命もが危ぶまれるような時代の話だった。こんなことが実際に起ったのかと今もどこか信じられないような気持ちでいる。いまを生きる私たち日本人にとってはデモという活動自体がどこか遠く感じられる。それでも、韓国の歴史としてこんなことが本当にあったのだと知ることは必要なことだろう。

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韓流ブームと韓国の流行り物が日本に続々とやってくる。アイドルはキラキラしていてかわいい、かっこいい若者がたくさん日本でデビューする。そんな彼らの親世代の話でもあるのだ。そう考えたら、遠い過去の話でもない。暗い歴史も自国で映画の題材としてたびたび扱われるようになっている。「光州事件」を知らないという人はぜひ本作をみて知って欲しい。時代背景もわかりやすくまとめられていた。また、政治的な話ではなく、事件となった現場付近に住んでいた家族の物語から歴史を学ぶのも新しい視点で没頭できた。

(文/杉本結)

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『1980 僕たちの光州事件』
4月4日(金)全国ロードショー

監督・脚本:カン・スンヨン
出演:カン・シニル、キム・ギュリ、ペク・ソンヒョン、ハン・スヨン、ソン・ミンジェ
配給:クロックワークス

原題:1980
2024/韓国/90分
公式サイト:https://klockworx.com/movies/1980/
予告編:https://youtu.be/maphtMMVV20
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