『月刊予告編妄想かわら版』2025年02月号

映画『ANORA アノーラ』(02月28日公開)公開より
毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』四十二回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
02月公開の映画からは、この四作品を選びました。
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『ファーストキス 1ST KISS』(02月07日公開)
公式サイト:https://1stkiss-movie.toho.co.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=Ba7CxVOmjDI
ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』などを手がけてきた坂元裕二によるオリジナル脚本×『ラストマイル』の塚原あゆ子監督がタッグを組んだ『ファーストキス 1ST KISS』。
結婚して15年になる硯カンナ(松たか子)と硯駈(松村北斗)の夫婦は長く倦怠期で不仲だった。ある日、駈が事故で亡くなってしまう。そんな中、カンナは夫と出会った2009年にタイムトラベルできる術を手に入れることになる。再び若き夫に出会ったカンナは「この人が好きだった」と改めて気づくことになる。
「わかったよ。あなたを助ける方法が。私たちは出会わない。結婚しない」というカンナの決意も予告編で聞くことができます。
ここからは妄想です。予告編では「もう一度だけ、会いたい人はいますか?」というテロップも出てきており、それがこの作品の軸でしょう。カンナは過去に戻れるようになったことで、自分と出会って結婚しなければ夫の駈は2024年に死なないと思い、行動に移すようです。しかし、カンナが自分たちの時間軸とは別の場所からやってきたことを若い駈は疑うような場面も見ることができます。
2009年の時点ではカンナの行動によって二人は結ばれないものの、カンナのことをずっと忘れないで探し続けた駈が2024年に彼女を見つける。というロマンティックなラストではないでしょうか?
『ファーストキス 1ST KISS』
2025年2月7日(金) 全国東宝系にてロードショー
配給:東宝
©2025「1ST KISS」製作委員会
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『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(02月14日公開)
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/captain-america-bnw
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=f1Ainr1F8IQ
コロナパンデミックの影響と全米映画俳優組合のストによって、2024年は作品数が減っていたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』。
初代キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースから最も信頼され、彼らから盾を託されたファルコンことサム・ウィルソンが新たなキャプテン・アメリカとして活躍する本作。
アメリカ大統領であるサディアス・ロス(ハリソン・フォード)を狙った組織的なテロが起きる。だが、犯人の一人が「俺はやってない」「気をつけろ、キャップ。何かがおかしい」とサムに告げるシーンを予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。「君はステーブ・ロジャースにはなれない」「その通り。俺は俺だ」という大統領とサムのやりとりもあり、彼らの不仲が物語に大きく関与しそうです。
「何が真実なんだ」「誰かがすべてを操ってる」という不気味なセリフもあり、今作では「敵」が誰なのか、なんの目的なのかがわからないまま新キャプテン・アメリカが事件に巻き込まれていくようです。大統領がレッドハルクになるシーンも予告編にあるので、やはり今回のラスボスはアメリカ大統領なのでしょう。大統領がヒーローの前に立ち塞がるというのはアメリカらしいアイロニーに見えてしまいます。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』
2月14日(金)全国劇場公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2025 MARVEL.
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『ゆきてかへらぬ』(02月21日公開)
公式サイト:https://www.yukitekaheranu.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=AYSKbAhSk4s
『探偵物語』などを手がけた根岸吉太郎監督が鈴木清順大正浪漫三部作の脚本を書いた田中陽造の幻の脚本を映像化した『ゆきてかへらぬ』。
大正時代、駆け出しの女優の長谷川泰子(広瀬すず)と年下の詩人の中原中也(木戸大聖)は京都で出会って惹かれ合う。二人は一緒に上京して同居しながら互いに創作活動に励む。ある日、中也の詩人としての才能を感じた文芸評論家の小林秀雄(岡田将生)が二人の住んでいる家を訪ねてやってくる。
「小林さんあなた中原が好きなのね」という男同士の仲睦まじい距離感にどこか複雑な感情を覚える泰子。小林も次第に泰子に引かれていく姿を予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。と言いたいところですが、三人がその後どうなったのかはわりと知られています。不世出の天才詩人だった中原は若くして亡くなってしまう。小林は文芸評論家として日本文学に大きな影響を与える存在になりました。泰子は実業家と結婚して創作活動からは離れて余生を送りました。
この「奇妙な三角関係」は彼らにとって二度と戻れないかけがえのない青春の日々だったのは間違いないでしょう。中也の詩が今も残るのは泰子と小林との日々が大きかったのも想像に難くありません。この映画を観終わったら中原中也の詩を詠み返してみようと思います。
『ゆきてかへらぬ』
2025年2月21日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給:キノフィルムズ
©︎2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
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『ANORA アノーラ』(02月28日公開)
公式サイト:https://www.anora.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=2WtOa7PWqFA
第77回「カンヌ国際映画祭」で最高賞パルムドールを受賞したショーン・ベイカー監督作『ANORA アノーラ』。
NYでストリップダンサーをしながら暮らすアノーラは、ロシアの大富豪の御曹司のイヴァンと出会う。「僕の専属になってくれない?」「1万5千ドル。現金で前払い」とというやりとりがあり、イヴァンがロシアに帰るまでの間、アノーラは「契約彼女」として贅沢三昧の日々を過ごすようです。
ラスヴェガスにやってきたアノーラとイヴァンは衝動的に結婚します。イヴァンの両親は二人の結婚を阻止するために屈強な男たちを送り込んでくるのも予告編で見ることができます。シンデレラストーリーのその先をアノーラはどう進んでいくのでしょうか?
ここからは妄想です。ショーン・ベイカー監督作品にはセックスワーカーや移民というキャラクターが今までも出てきていました。今作で言えばアノーラもですが、彼女と結婚すれば、「アメリカ人になってロシアに帰らなくて済む」と話しているイヴァンもその系譜かもしれません。彼はロシアに帰りたくない理由がありそうです。
アノーラはイヴァンを両親と縁を切らせて、自立を促すのではないでしょうか。彼がほしかったものはお金ではなく愛する人だった。という逆シンデレラストーリーだったというラストはどうでしょうか?
『ANORA アノーラ』
2025年2月28日(金) 全国ロードショー
配給:ビターズ・エンド、ユニバーサル映画
©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©Universal Pictures
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文/碇本学
1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。