自己肯定感をあげ背中を押してくれる一本!『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』
『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』
突然ですが、もしも死にそうになった時になにかやり残したことが思い浮かぶとしたらどんなことですか?
今回紹介する作品の主人公エテロは死を意識したのちに、突発的に人生で初めて男性と肉体関係を持ってしまう。そこから、彼女の人生が変わりはじめる......。自分の正直な気持ちと向き合うエテロが歩む道とは─。
このエテロ、実は48歳で今まで恋愛経験が全くない処女という設定だ。性の知識もほとんどないエテロの見た目はぽっちゃりとふくよかで包容力のある姿だが中身はか弱い少女のような一面をもっている。そのギャップが見ていてなんだか彼女の人生を応援したい気持ちやどこか彼女の恋愛をひっそりと見守る母親のような目線で観賞していた。
40~50代の女性が少しずつ感じる「老い」や「女性の病気」にもフォーカスされるところもリアルでエテロに親近感がわくように感じた。自分もいつかやってくるかもしれない女性疾患や更年期障害など今後起こるであろうことへの不安な気持ちが急いで心配なことが起こったらインターネットで検索したりとてもリアルな描写となっていた。
本作の題名にもなっているブラックバード、「黒い鳥」は聖書では「誘惑」、スピリチュアルな意味では「警告」を意味する。そのことからも冒頭でブラックベリーを摘もうとしてブラックバードを見つけた矢先にエテロは足を滑らせて臨死体験をするこの描写はこれから起こることへの警告だったようにも思う。
また、エテロが初体験後に「あんなきれいな黒ツグミ見たのは初めて」という台詞からも性への目覚めが連想させられる。また続いて「生きている実感がわいた」というエテロにそれを聞いた友人がもう若くないんだから気をつけるようにと忠告する。この友人とエテロの会話はエテロが川に落ちそうになった話なのだが違うことの話をしているように聞こえた。
こういった話の裏を連想させるような演出が巧妙になされた作品だった。
人生が終わるその時に、後悔がないように周りにどんな風に言われようと自分の気持ちに正直に生きて「自由」な選択をするエテロが芯の強い女性に見えた。惹かれる男性に対しても自分をよくみせようとしないで、ありのままの自分で勝負するところに好感をもった。
選択肢が増えた時代に他人の意見に左右されないということはとても難しいことだと思う。多様な人間を肯定するメッセージがエテロの言動から強く伝わってくるところが本作の魅力だと感じた。
人生でなにかをはじめることに迷ったとき、自分の意見が他人と違うことに悩んだときにぜひ見てほしい作品だ。ラストは驚きの展開も待っているので是非劇場で確認してほしい。
(文/杉本結)
『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』
2025年1月3日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町他にて公開
監督:エレネ・ナヴェリアニ
出演:エカ・チャヴレイシュヴィリ、テミコ・チチナゼ
配給:パンドラ
原題:Shashvi shashvi maq'vali
英題:Blackbird Blackbird Blackberry
2023年/ジョージア=スイス/110分
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/blackbird/
予告編:https://youtu.be/Yio2VDjIjuY?list=TLGGXpKTOrrH1CQzMDEyMjAyNA
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