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映画ファン必見『映画を愛する君へ』

『映画を愛する君へ』 1月31日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

本作は、映画の歴史を知ることもできて、なおかつ本当に大切なものが映画から見えてくる良作だったので紹介したい。

フランスの名匠アルノー・デプレシャン監督が自身の映画体験を投影しながら、年代別にパートに分けて初めて映画館を訪れた幼少期、映画部で上映会を企画した学生時代、評論家から映画監督への転身を決意した成人期を、19世紀末の映画の誕生から現在に至るまでの映画史とともに描きだしている自伝的シネマエッセイとなっている。
本編には映画史に功績を残した50本以上の名作が登場し、デプレシャン監督が尊敬するアメリカの哲学者スタンリー・カベルやフランスの批評家アンドレ・バザンの言葉も引用しながら"映画とは何か"をひもといていく。

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本作を鑑賞しながら「自分はなんで映画が好きなのだろう?」と自身の映画体験の歴史を併走させながら鑑賞していたように思う。幼少期に夢中になって鑑賞していた作品や初めて映画館に行った記憶、当時は指定席もなく空いている席に座っていた。時には座席がなく階段に座ってみたことや立ち見する人もいたことを懐かしく回想していた。

19世紀、写真という技術が誕生してから20世紀に入り映画が本格的に制作されはじめる。21世紀に入り、今では一人一台カメラの機能が常備された携帯電話を持ち、誰もが映像を撮り配信する時代となっている。

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映画はいつの時代の作品だとしても色あせることなく鑑賞できるところが素晴らしいと、改めて実感することができた。時の流れと共に様々な技術が発達して変化するものがどれだけあったとしても、人間の持つ感情には大きな変化がなく過去の作品からも感動を得られる。

映画をみることを通じて、現実の世界では関わることのない人の感情や考えを知ることができる。歴史的な事件を知るきっかけになることもある。また、大きなスクリーンで鑑賞することで自分自身とゆっくりと向き合う時間になることもある。
映画ファンにおすすめしたい一作だ。ぜひ、劇場でお楽しみいただきたい。

(文/杉本結)

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『映画を愛する君へ』
1月31日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

監督・脚本:アルノー・デプレシャン
脚本:ファニー・ブルディーノ
出演:ルイ・バーマン クレマン・エルヴュー=レジェ フランソワーズ・ルブラン、ミロ・マシャド・グラネール、サム・シェムール、ミシャ・レスコー、ショシャナ・フェルマン、ケント・ジョーンズ、サリフ・シセ、マチュー・アマルリック
配給:アンプラグド

2024/フランス映画/88分
原題:Spectateurs! 英題:Filmlovers!
公式サイト:https://unpfilm.com/filmlovers/
予告編:https://youtu.be/x1pQT6eQxZc
© 2024 CG Cinéma / Scala Films / Arte France Cinéma / Hill Valle

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