A24発のミュージカル作品『ディックス‼ ザ・ミュージカル』
『ディックス‼ ザ・ミュージカル』 1月17日(金) 新宿ピカデリー、渋谷ホワイト シネクイントほか全国ロードショー
今回紹介する作品はA24初のミュージカル映画だ。
ただのミュージカル映画とはひと味もふた味も違う! というのも、「映倫が定めた本作のレーティングはR15+ですが本編には大変不謹慎で過激なシーンがあるため、18歳以上の鑑賞を推奨します。」という注意書きが鑑賞時にもらった資料にあった。
こんな注意書きのある作品みたことない。いったいどんな作品なのだろう? 大人の過激なシーンが多いのかと思ったら、予想とは異なりまさかの全編すべてが下ネタ連発!
ニューヨークのトップ・セールスマンとして働くクレイグ・ティトル(ジョシュ・シャープ)とトレヴァー・ブロック(アーロン・ジャクソン)は、女と権力が大好きなモテ男。ドラッグでハイになって、イケてるギャルたちとセックス三昧。最高のシングルライフを過ごしているはずなのに、なぜか彼らの心は満たされず、大切な何かが欠けているという思いがある。
そんな二人はある日、運命の糸に引き寄せられるように、新しい職場で出会う。最初は互いをライバル視するものの、やがて自分たちが生き別れの双子なのだと気が付く。
完璧なはずの彼らに足りないものは家族だったのだ。そこで二人は離婚した両親、エヴリン (メーガン・ムラーリー) とハリス (ネイサン・レーン) を復縁させようと企てるものの、親たちは複雑な事情を抱えていて......。
そして、ばらばらになった家族を再び一つにするために奔走する彼らだったが、父親が世間に隠していた異形の家族の存在により計画は狂いだし、やがてそれは地下世界に隠された大いなる秘密に繋がっていくのだった......。
本作は『グレイテスト・ショーマン』や『ラ・ラ・ランド』のスタッフが集結し、『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』で一世を風靡した風刺コメディの名手ラリー・チャールズ監督がメガホンをとった。
双子役を演じた2人がオフ・ブロードウェイで上演していた30分のコメディミュージカルが原案となっている。
ニューヨークの大人気コメディ劇場「アップライト・シチズンズ・ブリゲード」で演者として活躍していた彼らは、今回共同脚本も手掛けており、当時はすべてのキャラクターを自身で演じていた。
だが映画化に際して、大人気ラッパーのミーガン・ジー・スタリオン、『ライオン・キング』のティモン役で知られるネイサン・レーン、『ウィキッド ふたりの魔女』にも出演する人気コメディアンのボーウェン・ヤン、『ふたりは友達? ウィル&グレイス』のメーガン・ムラーリーなどの豪華キャストが参加している。
豪華なキャストが真面目に演じているすべてが下ネタであり、そこにある愛の物語となっている。その中でも面白かったのが、父親が飼っている「下水道ボーイズ」という異形の家族。全くお金をかけずに作ったのであろう彼らは今時の技術で綺麗にされたものではなく、昔の人形劇に登場する人形に近いものを感じた。チープなのだけれどどこか懐かしさも感じるような人形は気持ち悪さや不気味さもあった。
ラストはまた思いもよらない展開とそれに対する神様の言葉が印象的だった。すべての愛の形を受け入れることがこの作品のすべてだったように思う。
愛の形は人の数だけあるのだということを再確認した。
下ネタが苦手な人にはお勧めしにくい作品ではあるが、普段絶対に言葉にすることができないことをすべて言葉にしてしまったような作品でもありそこに面白さがあった。
(文/杉本結)
『ディックス‼ ザ・ミュージカル』
1月17日(金) 新宿ピカデリー、渋谷ホワイト シネクイントほか全国ロードショー
監督:ラリー・チャールズ
出演:ジョシュ・シャープ、アーロン・ジャクソン、ネイサン・レーン、ボーウェン・ヤン、ミーガン・ジー・スタリオン
配給:トランスフォーマー
原題:DICKS THE MUSICAL
2023/アメリカ/86分
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/dicksthemusical/
予告編:https://youtu.be/c84UgzCK7fY?si=6suYmKXTDfnwseLU
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