世界初「豆判のみ春画展」歌舞伎町で開催 『べらぼう』で描かれた絵師たちの「暗号」とは

春画で見るお江戸風俗考 (新潮文庫)
『春画で見るお江戸風俗考 (新潮文庫)』
春画ール
新潮社
990円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

 2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(以下、『べらぼう』)が、2026年1月20日にギャラクシー賞(2025年12月度月間賞)を受賞しました。放送批評懇談会は「吉原を『なかったこと』にせず、そこからいかに江戸の文化が花開いていったかを正面から描いた」と評価。放送終了後も話題は続き、1月30日には『べらぼうメモリアルブック』(NHK出版)が発売されています。

 劇中では、蔦屋重三郎が喜多川歌麿に春画の世界を語りかけるシーンがありました。歌麿をはじめ、多くの絵師たちが実は春画の名手でもあったのです。そんな『べらぼう』で江戸の出版文化に興味を持った方におすすめしたいのが、春画研究家・春画ールさんの著書『春画で見るお江戸風俗考』(『春画の穴 あなたの知らない「奥の奥」』改題)です。

 同書は、70点以上の春画から「もう一つの江戸」を読み解く一冊。「『べらぼう』に登場する絵師や戯作者たちは、ほとんどが春画の仕事に携わっている」(同書より)と記す著者は、「現代人が見る春画」をコンセプトに発信を続けてきた春画ウォッチャーです。同書ではたとえば、歌舞伎役者を描いた春画について、従来の解説本では「それぞれの役者の性器のイメージを描いている」とされてきたものを、「役者が男根だったらどんな見た目か」を描いているのだと読み替えています。擬人化ならぬ、人を性器に見立てるという逆転の発想で、春画の「奥の奥」まで踏み込んでいく著者ならではの視点です。

 春画の「奥の奥」には、他にもたくさん絵師たちが忍ばせた仕掛けが潜んでいます。一例が「絵暦」としての春画です。江戸時代、暦は幕府の許可なく出版できない統制品でした。そこで人々は、絵の中に「大の月」「小の月」の情報を忍ばせた私家版の絵暦「大小(だいしょう)」をつくり、正月に配り合いました。大名たちも、暦を記した春画を新年に交換していたといいます。扇の骨の数や着物の縞模様、花びらの枚数など、一見すると装飾に見える部分に暦情報が隠されていることもあります。
 
 2月14日から東京・歌舞伎町で始まる「小さな愛の物語‐豆判春画の世界‐」は、こうした「読み解く楽しさ」を体感できる展覧会です。会場は新宿歌舞伎町能舞台と元ホストクラブ「BOND」の2会場。主役の「豆判春画」は、縦9センチ×横12.3センチ、スマートフォンとほぼ同じ大きさの錦絵の春画です。「豆判春画」のみで構成される展覧会は世界初の試み。浦上蒼穹堂・浦上 満氏のコレクションから約300点が展示され、そのうち80点は2015年の永青文庫「春画展」以来、11年ぶりの公開となります。小さな画面だからこそ際立つ、絵師・彫師・摺師たちの緻密な技巧を間近に体感できます。

 会期は2月14日〜3月15日(一般=1100円、学生=700円。18歳未満は入場不可)。『べらぼう』で絵師たちの遊び心に惹かれた方は、彼らが絵に込めた「暗号」をご自身の目で解いてみてはいかがでしょうか。4月4日〜5月31日には「北斎・英泉 艶くらべ ‐歌舞伎町花盛り‐」も同会場で開催予定です。『べらぼう』でおなじみの北斎と、美人画の名手・渓斎英泉による春画が並びます。

【関連リンク】
新宿歌舞伎町春画展WA 
https://www.smappa.net/shunga/

« 前のページ | 次のページ »

BOOK STANDプレミアム