もやもやレビュー

ティルダ・スウォントンが誘う『アラビアンナイト 三千年の願い』

アラビアンナイト 三千年の願い(字幕版)
『アラビアンナイト 三千年の願い(字幕版)』
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映画『アラビアンナイト 三千年の願い』は、女性学者と魔人を巡る物語である。監督は『マッドマックス』『ハッピーフィート』や『ベイブ』のジョージ・ミラー。主人公の学者アリシアを演じるのは、ティルダ・スウィントン。これがまずちょっと意外なところ。だって、ティルダが出演するファンタジー映画というと、どちらかというとそっち(魔人)側の役どころのイメージが強い。それに、いくら地味な膝下スカートを履いたとて、ティルダ様の端正さが滲み出てしまう。

と思っていたのだが、瓶の中に封印されていた魔人を演じるイドリス・エルバ(『アベンジャーズ』シリーズ、『ビースト』の肉体派俳優)と並んだ時の二人の画がとても美しく、あぁそうか、この作品はきっとラブストーリーなのだ、これはこれでいいのだと気付いた。

原作は『アラジンと魔法のランプ』をもとにしたイギリスの短編小説『ザ・ジン・イン・ザ・ナイチンゲール』の一編。願いを叶えてもらう側のアリシアが懐疑的だったり、魔人の過去に焦点が当てられていたりと、現代版としてアップデートされている点が面白い。前半はジン自身の過去3000年にも及ぶ回想パート。美術はかなり凝っていて、おとぎ話を体現したかのような煌びやかさ。先の読めない展開に引き込まれる。
後半はアリシアにバトンが移り、現実なのか空想なのか入り混じった展開となっていく...。

ジャンルが違えど、ジョージ・ミラーが描く映画のテーマは一貫して「愛」だと思う。『アラビアンナイト 三千年の願い』では、アリシアが物語論の識者であるという設定からして、物語のもつ愛や強さをいかに信じられるのかが焦点になってくる。不思議な結末を観ると、魔人との出会いそのものが彼女の妄想だったのかもと思うだろうか。それとも現実に出会った結果だと思うだろうか。映画を観た人とぜひ話をしてみたい。

(文/峰典子)

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