『月刊予告編妄想かわら版』2025年01月号
『リアル・ペイン〜心の旅〜』(1/31公開)より
毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』四十一回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
01月公開の映画からは、この四作品を選びました。
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『エマニュエル』(01月10日公開)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/emmanuelle/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=AuRBb2uXZAg
『あのこと』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したオードレイ・ディヴァン監督がかつて全世界を虜にした『エマニエル夫人』を現代に生まれ変わらせた『エマニュエル』。
エマニュエル(ノエミ・メルラン)は オーナーから査察依頼を受け、香港の高級ホテルに滞在しながらその裏側を調べ始める。しかし、そこで彼女を待っているのは「禁断の快感」へのいざないだった。
「ねえ、教えて。閉じた〈扉〉の前で何を妄想する? 踏み入った先にある"快楽"? 待つのは"拒絶"かもーー それでも〈扉〉を開けるのかしら」という彼女に対して、ケイ・シノハラ(ウィル・シャープ)は「そこにいるのが誰かによるな」と答えているシーンを予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。〈扉〉という言葉から連想されるのは本能(あるいは性欲)の向こう側に行くか行かないのかというものです。エマニュエルは次第に向こう側に足を踏み込んで行くのでしょう。
また、ケイ・シノハラに「解き放て」と言われて、エマニュエルはどんどん冷静な顔から何かを追い求めるような表情になっていくのも予告編で見ることができます。彼女はホテルを飛び出して彼との逢瀬に浸るようになって、快楽と共に落ちぶれてしまう。最後には香港で男たちに崇められる伝説の娼婦になっているのではないでしょうか?
『エマニュエル』
2025年1月10日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開
配給:ギャガ
© 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHÉ FILMS
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『サンセット・サンライズ』(01月17日公開)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/sunsetsunrise/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=b1NyChznXPc
岸善幸監督×宮藤官九郎脚本×菅田将暉主演という豪華タッグによる泣き笑いの移住エンターテイメント映画『サンセット・サンライズ』。
コロナ禍の東京でサラリーマンとして働いている晋作(菅田将暉)は、趣味の釣りが満喫できる三陸の町にある4LDK・家賃6万円の神物件を見つけて"お試し移住"を開始する。大家の百香(井上真央)や町の人たちの交流も誤解も交えながらも始まっていくようです。
「モモちゃんが過去を乗り越えて、心の底から笑えるように!」「あの家さ、他人が住むっつうのは大変なことなんだど」と彼女を取り巻く人たちの言葉や、その家から三陸の海を見つめている桃華の姿も予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。と言いたいのですが試写で観ました。宮藤官九郎脚本『あまちゃん』も三陸が舞台でしたが、今作ではコロナ禍という未曾有の危機の期間を描いています。そこには地方と東京、被災地と中央、地元とよそ者というある種の対立関係をクドカンならでは笑いに昇華しながらも、観客に問いかけてくるものがありました。
また、晋作と百香の関係性の変化や、東北の人たちが思っていた気持ちが真っ直ぐに語られるシーンでは涙が止まりませんでした。コロナ禍を経て、東日本大震災の記憶が薄れていく中で、ぜひ劇場で観てほしい一作です!
『サンセット・サンライズ』
2025年1月17日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
Ⓒ楡周平/講談社 Ⓒ2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
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『嗤う蟲』(01月24日公開)
公式サイト:https://waraumushi.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=dgVEa8QLW_E
『ビリーバーズ』の城定秀夫監督と『ミスミソウ』の内藤瑛亮脚本によるムラ社会のダークサイドを描いた『嗤う蟲』。
麻宮村という田舎に引っ越してきた杏奈(深川麻衣)と夫の輝道(若葉竜也)は、自治会長の田久保(田口トモロヲ)の自宅に挨拶に出かける。田久保は夫婦に向かって「子供はおるのか?」と聞き、その妻(杉田かおる)は杏奈に「かぼちゃは妊娠に効くにん」とお節介のような言葉をかけています。
また、田久保は輝道に「昨日どこ行っとだ?」と聞いてきたり、杏奈たちの家の前にゴミがばら撒かれていたり、村の人たちが集まった場所で杏奈のお腹に赤ちゃんがいるかのように触っている主婦たちの姿もあり、この村はなにかがおかしいことも予告編でわかります。
ここからは妄想です。予告編を見ているとどうも子供を作るということに関する慣習のようなものが村を支配しているように見えます。タイトルに「蟲」とあるので、田久保には人の子供を食べる異形の「蟲」が取り憑いていて、村に子供が生まれると彼が子供を食べるという恐ろしい祭りが開催されるそんなダークな展開ではないでしょうか?
最後は村人たちから逃げ出した杏奈たちでしたが、彼女のお腹にその「蟲」が寄生してしまっていて、お腹を破って出てくるという「エイリアン」的な終わりはどうでしょうか?
『嗤う蟲』
2025年1月24日(金)全国ロードショー
配給:ショウゲート
Ⓒ2024 映画「嗤う蟲」製作委員会
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『リアル・ペイン〜心の旅〜』(01月31日公開)
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/realpain
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=8aykGLFvjHs
俳優のジェシー・アイゼンバーグが監督・脚本・主演を務めた長編映画第二作目となる『リアル・ペイン〜心の旅〜』。
ニューヨークに住んでいるユダヤ人のデヴィッドと従兄弟であるベンジー(キーラン・カルキン)は大好きだった祖母の遺言で、彼女が戦前に住んでいたポーランドに行ってホロコーストツアーに参加することになる。
人付き合いのあまり上手ではないデヴィッドと陽気明るく社交的なベンジー。正反対な二人はツアーのメンバーと交流しながら旅を続けて行くようです。「家族の恐ろしい歴史を振り返ると、他人の真の痛みから俺達は切り離されてる」と心の痛みを訴えるベンジーの印象的な姿も予告編で見ることができます。
ここから妄想です。「ホロコースト中だ」「今悲しまなきゃ話にならない」というデヴィッドとベンジーの会話などから、ベンジーの方が実は傷つきやすく、目が離せない存在だとわかります。
ユダヤ人である彼らにとっての「傷」を感じるホロコーストを訪れたことで、祖母を失って生きることが辛くなっていたベンジーは、その歴史の上に自分がいることを強く感じて、生きたいと強く思えるようになるのではないでしょうか? 最後はアメリカに戻ってきた二人が空港で別れる場面でしょうか、お互いに気になりながらも後ろは振り向かない、そんなシーンかもしれません。
『リアル・ペイン〜心の旅〜』
2025年1月31日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
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文/碇本学
1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。