もやもやレビュー

政治の闇にメスを入れる『JAWAN/ジャワーン』

『JAWAN/ジャワーン』 11月29日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

インド映画といったら、上映時間が長く踊るシーンがあるといった印象が強いのではないでしょうか。今回紹介するジャワーンも171分と約3時間の映画です。そしてやっぱり踊っています。だけど、いつも観ているインド映画とは一味も二味も違いました。

まず監督はタミル語映画界(コリウッド)の期待若手ヒットメーカー、アトリー。主演はヒンディー語映画界(ボリウッド)のスーパースター、シャー・ルク・カーン。
インドには少なくとも30の言語があり公用語であるヒンディー語と準公用語の英語が公的共通語と規定されています。そんな生活環境のインドでは言語の多様性が、日常生活の根底にあるので多くの人が複数言語話せるマルチバイリンガルです。そのため、インド映画と一括りに言ってもヒンディー語、テルグ語、タミル語その地域の言葉で製作されているそうです。また、ビジネスの場では英語が広く使われているようです。

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正直、字幕頼りにみるしかない私は何語なのかも気にもとめていませんでした。
監督と主演俳優の言語の違いにどんな作品が出来上がってくるのか不安と期待が半々といった作品だったようですが蓋をあければ2023年インドNo. 1ヒット作に!
というのも、本作近年インドの抱える社会的な闇の部分にかなり斬り込んで作っています。コロナ禍で起こった医療問題、農民の問題、政治に疑問を持てという強いメッセージ性のある作品となっていました。

電車の中で突如起こった身代金の要求。そこで犯人はヴィクラム・ラトールと名乗ります。その男とやり手の交渉人として現れたのがナルマダ。ヴィクラム・ラトールとは一体何者なのか?そして彼と一緒に事件を起こした6人の女の正体は?

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少しずつ全貌が見えてくるにつれて作品に深みと重みが増していくように感じました。
犯人たちの事件の真相の裏に隠されたインドでいままさに起こっている社会問題が浮かび上がってきます。知るたびに心が締め付けられると同時になにか闘志のようなものが湧いてきました。

作品の紹介をしながらこんなことを言うのもおかしな話なのですが、予告編をみるくらいで前情報もなく本作は見た方が良いと思います。期待しすぎて行ってもがっかりすることはないくらい素晴らしい作品でした。インド映画には大ヒットした名作も多くありますがそのランキングが変わるのではないかというくらい本作は観ておくべき作品です!

171分と聞くと長く感じると思いますが、一切だれるシーンもなくあっという間に171分が通り過ぎていたという感覚です。鑑賞後に得たものが多く満足度の高い作品に仕上がっていると思います。エンドロールの最後まで劇場から立ち上がる人がいないのも印象に残る作品でした。

(文/杉本結)

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『JAWAN/ジャワーン』
11月29日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督:アトリー
出演:シャー・ルク・カーン、ナヤンターラ、ヴィジャイ・セードゥパティ、ディーピカー・パードゥコーン、ラクシュミー、イーラム
配給:ツイン

2023/インド/171分
公式サイト:https://jawan-movie.com
予告編:https://youtu.be/ll-Ux_3_sb4?si=M7yydWiHj0fg5P-i
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