酷い作品を制作した人間が一番の悪『EVILエヴィル』
- 『EVIL エヴィル(字幕版)』
- トーマス・クレッチマン,ナディーン・ヴェラスケス,ジョシュ・スチュワート,クリス・コイ,マット・マンロー,マリオ・ソレンティ,マリオ・ミッシオーネ,マルセラ・オチョア
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『遊星からの物体X』のプロデューサー陣が送るアクションホラーという謳い文句に惹かれて視聴。ジャケットに写る怪物がどう見ても『ヴェノム』にしか見えないし、駄作の雰囲気をプンプンに感じながらも87分間耐えてみたが終わってみると「一体何を見せられたのだろう?」という感想しか出てこない。霊との対決の決め手が物理って何だよ。
息子を眼の前でさらわれ殺された主人公のメイソン博士は、息子の霊を探すべく死後の世界を解き明かそうと祈祷師のマヤに死者の魂が見えるお茶を調合してもらう。マヤの妹の霊が見えたメイソン博士はお茶の力を確信し、財団の資金で霊が見える薬物を完成させた。自身と教え子ら4人に投薬し、無人の廃屋で財団からの見届人のもと実験を行うことに。
すると霊が見え始め、メイソン博士はさらに深く霊と交信すべく追加で投薬を行い----という内容。
死後の世界と繋がったと博士は言うが、当然マヤや教え子たちは混乱。さらに目の前の霊たちは「"笑う男"が来る」と警告を発する。何が起きているのか分からない状況で正体不明の異形が現れ霊たちを貪り食い去って行く。この時点で視聴者置き去りで変なクスリをやっているのは自分なのではないか?という気分に。中だるみと急な展開が交互に続いてよく分からない。
実験中、教え子の1人が負傷するハプニングが発生し、教え子やマヤが実験に疑問を持ち始めているのにメイソン博士はさらなる投薬を考えていると博士の息子の霊が登場。その後唐突に世界の伝承やマヤの知る伝承が紹介され、謎の異形は"肉体なきもの"と呼ばれ罪なき者を食べると命を取り戻せると信じている怪物だと説明が始まった。話に脈略がなくて呆然とするよりない。
視聴者を困惑させる中、今度は実験をしている廃屋がメイソン博士の家であり息子が殺された場所であると判明。ここで博士は実験の目的は笑う男を始末して息子を探すことだと言い出す。あまりの個人的な理由にマヤや教え子は呆れて外に出ようとするが笑う男が現れて次々と教え子を殺害。逃げるマヤは途中で死に絶えた博士を発見する。外には笑う男がいて絶体絶命となった時に死んだはずの博士が現れマヤにスコップを笑う男の顔面に突き刺すよう指示。霊との戦いで物理が勝利するホラーってどうなのだろう?
何とか勝利したマヤは安堵するとメイソン博士は既に消えていた。そこで博士は薬物の過剰摂取で早々と死んでいたことに気づく。
多分、ここで種明かしをしたつもりなのだろうが内容がとっ散らかっている状態で種明かしも何もない。比較的理解できる部分を取り上げて書いたはずなのに自分で読んでも意味が分からない。
分かりやすく書いてしまえば訳の分からない薬を摂取したら祈祷師以外全員死んでしまいましたというお話。YouTubeの予告編で"笑う男"が究極の悪とされているが、登場人物の中で一番の悪は自分の都合で教え子を死なせたメイソン博士だけだろう。さらに言うならこんなものを作った制作陣が一番の悪にしか思えない。
(文/畑中雄也)