それは本当にあなたの欲しいものですか?『怪談晩餐』
『怪談晩餐』 7月19日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか全国ロードショー
夏といったら怪談。筆者、怪談もホラーもとても苦手なジャンルである。だけど怖い物みたさで見てしまう。今回紹介するのは韓国の怪談6作品のオムニバス。
どの作品も配信をしたり、受験、ダンスと現代的な題材が多かった。他人事ではない題材にしたことで親近感がより一層湧きやすく、恐怖が倍増したように感じた。
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『ディンドンチャレンジ』
女子高生のボラ、ヨンビ、へユルはダンスユニットを組む配信者。チャンネル登録者数が伸びず、それぞれも悩みを抱えていた。そんな中、ある奇怪なダンスを踊ったら願いが叶うという噂を知り―。
どこか『リング』を彷彿とさせるような不気味な女性が奇怪なダンスを踊っている動画をみる3人。「私たちはみてはいけないものをみてしまった」という台詞がしばらく頭から離れることはなかった。私もみてはいけないものをみてしまった。
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『四足獣』
女子高生のユギョンは、成績優秀な姉と教育熱心な母親からのプレッシャーに耐え兼ねていた。ある日、漢江の橋の下で遭遇した何者かに、「4本足のものを殺せば願いが叶う」と言われるが―。
韓国のドラマ、映画でよく観る受験勉強に悩む女子高生の姿が描かれる前半とドッペルゲンガーに出会うことで人が変わったかのように変貌していく後半。6作品の中でもとてもよく出来た脚本だった。「感情を捨てロボットになる」と呟きながら机の前に座る少女の後姿が忘れられない一作。
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『ジャックポット』
人生のどん底だったジノは、カジノでジャックポットを引き当てて大金を手に入れる。その帰り道に嵐に遭い、バッグを抱えモーテルに泊まることになるが、その様子を監視カメラで窺う者がいた―。
人間の底知れぬ欲望をうまく引き出した作品だった。お金はいくらあってもまだまだ欲しいと思ってしまう。お金を持ってる人をみて悪いことを考える人もいる。お金が人生を大きく変えてしまう。307号室に隠された秘密を確認してほしい。
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『入居者専用ジム』
高級マンションに併設されている入居者専用のスポーツジム。利用時間は夜10時まで。以前は24時間利用可能だったのだが、どうやら"ある事故"がきっかけで自治会により変更されたらしい―。
絶対ダメって言われてるのになんで破るの!というよくある古典的なホラーなのにそれでもドキドキハラハラしてしまう。もう時間だよ!と何度心の中で鑑賞中に注意したことか。単純に怖かった。(最高の褒め言葉)
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『リハビリ』
救急活動中にウイルスに感染した消防士のジヨン。意識を取り戻すと、無機質なリハビリ施設の一室にいた。脳死を避けるために、ずっと動き続けなければならないというリハビリを課されるが―。
この作品が6作品の中で1番精神的に追い詰められた。終わりが見えない絶望を感じた。臨床試験に隠された真実とは一体なんなのか? 怖いけど知りたくてまんまと最後までみてしまった。
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『モッパン』
チャンネル登録者数154万人を誇る、大食い系ライブ配信者のもぐもぐ。同じ大食い系の新星ユラをゲストに呼んでコラボ動画を配信するが、もぐもぐはユラを蹴落とすために罠を仕掛けていた―。
題名のモッパンとは韓国語でグルメ番組、美味しそうに食べる姿を表す言葉だ。正直、大食いだとしてもタイムを競っていたとしてもここまで食べ物を汚く、家畜が餌を食べているかのような絵に嫌悪感を抱いた。題名とはかけ離れた姿に後半は驚くだろう。そして、まさかの結末に唖然とした。
6作品全ての作品に共通しているのは、何かを得るために何かを犠牲にしているということ。得ようとしているものはそれだけの代償を払ってまで自分に必要なものなのか見直すチャンスをくれる作品だった。
(文/杉本結)
『怪談晩餐』
7月19日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか全国ロードショー
『ディンドンチャレンジ』
監督・脚本:アン・サンフン
出演:チャン・スンヨン、オ・スンヒ、チャン・イェウン
『四足獣』
監督・脚本:ユン・ウンギョン
出演:シン・ウンス、キム・ホジョン
『ジャックポット』
監督・脚本:チェ・ヨジュン
出演:キム・テフン、チョ・ジェユン
『入居者専用ジム』
監督・脚本:キム・ヨンギュン
出演:ユン・ヒョンミン、チャン・グァン
『リハビリ』
監督・脚本:イム・デウン
出演:イ・ジュヨン、キム・ジュリョン
『モッパン』
監督・脚本:チェ・ヨジュン
出演:パク・ジナ、チェ・スイム
配給:アルバトロスフィルム
2023/韓国/118分
公式サイト:https://kaidanbansan.com
予告編:https://youtu.be/Ms-OPXuh_Tk
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