もやもやレビュー

会ってみたくなる2.5センチの世界 『マルセル 靴をはいた小さな貝』

マルセル 靴を履いた小さな貝 (字幕版)
『マルセル 靴を履いた小さな貝 (字幕版)』
ジェニー・スレイト,イザベラ・ロッセリーニ,トーマス・マン,ローサ・サラザール,レスリー・スタール,ディーン・フライシャー・キャンプ,ディーン・フライシャー・キャンプ,エリザベス・ホルム,アンドリュー・ゴールドマン,キャロライン・カプラン,ポール・メジー,ディーン・フライシャー・キャンプ,ジェニー・スレイト,ニック・ペイリー
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2010年から数年にかけてYouTubeで公開された短編が5000万回再生を記録。長編映画化が発表されるやいなや、熾烈な競争の末にA24が配給権を獲得。アニー賞の受賞に、アカデミー賞のノミネート。充分すぎるほどの話題を集めた「貝」である。

実写とストップモーションを組み合わせ、7年もの歳月をかけて製作された、2.5センチの貝ことマルセルは、とにかくチャーミング。最初は貝というより握りこぶしに見えていたのだが、妙に利発なところは目玉おやじのようにも見える。

一体どんな風につくったのかとメイキング映像を探してみたが、まずは背景となる実写の映像を撮影してから、すでに撮影済みの実写の映像にうまく合うように撮影したのだという。マルセルのちょっとした影の動きや照明の位置まで細かに調整しこだわっている様子が伺えた。本当に存在しているかのようにみえるマルセルがどうやって生まれたのか、監督をはじめクリエイター陣の奮闘ぶりがすさまじい。
ストーリーを簡単に。体長わずか2.5cmのおしゃべり貝のマルセルは、祖母と2人で暮らしている。そんなマルセルは、家に越してきた映像作家のディーンと出会い人間の世界を知っていく。YouTubeにアップした動画がSNSでバズり、なんと全米の人気者に...。

元になった短編動画の作者で、マルセルの生みの親であるディーン・フライシャー・キャンプが今作でも監督を務め、さらには映像作家のディーン役として出演。
マルセル愛がこちら側にまで伝わってくるかのような、ほのぼのとした一本だ。

(文/峰典子)

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