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女性が社会を変えていく『コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ー』

『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』 3月22日(金)全国公開

1960年代―中絶が違法な時代のアメリカ。名もなきヒロインたちが「女性の権利」のために立ち上がった、感動の実話を紹介したい。

1968年、アメリカのシカゴ。裕福な家の主婦として生きるジョイは何不自由ない暮らしを送っていたが、2人目の子供の妊娠によって心臓の病気が悪化してしまう。
唯一の治療は、妊娠をやめることだと担当医に言われ中絶を申し出るが、中絶が法律的に許されていない時代、地元の病院の責任者である男性全員から「中絶は反対だ」と、あっさり拒否されてしまう。
そんな中、街で偶然「妊娠?助けが必要?ジェーンに電話を」という張り紙を見つけ、違法だが安全な中絶手術を提供するアンダーグラウンドな団体「ジェーン」にたどり着く。その後、ジョイは「ジェーン」の一員となり、自分と同じ立場で中絶が必要な女性たちを救うために立ち上がる!

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子どもが欲しくてもできない。そんな悩みもある一方で、望まぬ妊娠をしてしまった時や身体的な問題で出産が難しいなど、悩むのは女性だ。間違いなく自分の身体の中で大きくなる新しい命。中絶は人を殺すことになるという人もいる。
だけど、さまざまな理由での望まぬ妊娠をして、その後育てることができない子どもを産むことは正しい選択なのだろうか?
この問題に正しい答えはないのだと思う。
そうやって産まれてきても、いい親にめぐりあうことができて幸せに暮らすことができる人がいるのだから。でも、親がいない環境で辛い日々を過ごした子どもも少なくはないはず。

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この作品の中で描かれているように当時、自分の身にはなにも起こらない男性が中絶という行為に反対していたという現実があった。中絶することは違法行為とされ、産むことしか選択肢がなかった。
妊娠、出産は命懸けの出来事である。自分の命をかけてでも産みたいと思うかどうか決めるのは当事者ではないだろうか。

「ジェーン」は実在した団体で、人工妊娠中絶が違法だった1960年代後半から70年代初頭にかけて、推定12,000人の中絶を手助けしたといわれている。
しかし、1973年アメリカ連邦最高裁が合法判決を下した「ロー対ウェイド事件」から50年、今、米国では、再び違法とする動きが活発化し、論争が激化している。女性たちが自ら権利を勝ち取った実話を映画化した本作は、映画祭で注目を集め大きな話題となった、今、観るべき社会派エンタテインメント作品である。
彼女たちが頑張ったその時間や労力がまたもとに戻ることがないように、今こそ広めるべき作品だ。

(文/杉本結)

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『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』
3月22日(金)全国公開

監督・脚本:フィリス・ナジー
出演:エリザベス・バンクス、シガニー・ウィーバー
配給:プレシディオ

原題:Call Jane
2022/アメリカ/121分
公式サイト:https://call-jane.jp
予告編:https://youtu.be/o8YGjalYUYE
©2022 Vintage Park, Inc. All rights reserved.

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