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駐車場から見つかった王様 『ロスト・キング 500年越しの運命』

ロスト・キング 500年越しの運命
『ロスト・キング 500年越しの運命』
スティーヴン・フリアーズ,スティーヴ・クーガン/ジェフ・ポープ,サリー・ホーキンス,スティーヴ・クーガン,ハリー・ロイド,マーク・アディ
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先日、我が家の生活圏に縄文遺跡が見つかったというので見学へ行った。大量に掘り起こされた住居跡や墓、土器のかけら。歴史とは教科書の中ではなく、こんな身近な場所に眠っているのかと驚くと同時に、案外そんなものなのかもしれないな、とも思った。

『ロスト・キング 500年越しの運命』は、500年前に戦死したとされるイングランド王リチャード三世の遺骨を、現代に掘り起こした女性の実話である。王が見つかった場所は、城でも教会でもなく、ショッピングセンターの横の駐車場だった。やはり歴史とは、案外そんなものなのだろう。

主人公フィリッパを演じるのはサリー・ホーキンス。歴史学者でも考古学者でもない普通の会社員だ。ただ彼女は、ふとしたことをきっかけに、リチャード三世に強く惹かれてしまう。暴君として語られてきた王の像に、どこか違和感を抱き、独自に資料を読み込んでいく。そしてたどり着く。「王の遺骨は、まだどこかにあるはずだ」という確信に。周囲は半信半疑。専門家も誰もが素人扱いで距離を取る。それでも彼女は掘ることをやめない。そして、発見。本当に見つかる。

サリー・ホーキンスは、"信じすぎてしまう人"の役がよく似合う。『パディントン』では、駅で途方に暮れる熊にためらいなく声をかけ、家に連れて帰る。『シェイプ・オブ・ウォーター』では、言葉を持たない異形の存在と恋に落ちる。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』では、貧しくとも息子の夢を信じ、背中を押す母親を演じた。

理解を超えたものに、まっすぐ手を伸ばす。周囲が首をかしげても、自分の感覚を疑わない。
『ロスト・キング』のフィリッパもまた、500年の通説に対して、たった一人で「違うのでは?」と言い続ける人だ。怒鳴りもしないし、革命も起こさない。ただ、信じることをやめない。その静かな粘り強さが、この映画の芯になっている。歴史は完成されたものではない。

誰かが疑い、誰かが掘り返し、少しずつ塗り替えられていく。足元の土の下にも、ショッピングセンターの駐車場の下にも、まだ物語は眠っている。そう思うと、歴史は遠い過去のものではなく、案外、私たちの生活圏のすぐ隣にあるのかもしれない。そして今も、掘り起こしてくれる誰かの手を待っているのかもしれない。

(文/峰典子)

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