75歳の松田優作が探偵役に!? 『探偵物語』脚本家が書き下ろす回想録&新シナリオ

生きている松田優作
『生きている松田優作』
丸山 昇一
集英社インターナショナル
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 1989年に40歳の若さで亡くなった俳優・松田優作さん。『太陽にほえろ!』や『探偵物語』などのテレビドラマ、そして『蘇える金狼』『ブラック・レイン』などの映画において、圧倒的な演技力と存在感で人々を魅了しました。そんな松田優作との10年間にわたる壮絶な交流を回想したのが、脚本家・丸山昇一さんが著した『生きている松田優作』です。

 丸山さんが松田優作と初めて顔を合わせたのは、新しく始まるテレビドラマ『探偵物語』の製作打ち合わせのときでした。「むき出しの野心。さわると危険」(本書より)という第一印象は、世間が松田優作に抱くイメージと近いかもしれません。人気はあるものの好きな俳優ではなかったという丸山さんですが、その後、『探偵物語』に続き、『処刑遊戯』『野獣死すべし』の脚本を担当し、公私ともにかかわりを深めていきます。

 しかし、24時間こちらの都合おかまいなしに呼び出され、「これをホン(脚本)にして」と無理難題をぶつけられ、ようやく書き上げた脚本をボツにされるといった中で、丸山さんは次第に「殺すか、殺されるか。喰うか喰われるか」(本書より)といった追い詰められた心境になっていきます。

 それでも、「いつかきっと快作ができると、松田優作の代表作の一本ができると、そうして報われる、優作と喜び合える日がくると思っていた。優作の私に対する厳しさも、その一念だったと思う」(本書より)と語る丸山さん。訃報を聞いた際には「もうあの苦しみから、すべて解放される」とガッツポーズをしたといいますが、「優作となら一緒に死んでもいいと思った。惚れた」(本書より)とまで思った男であったことも事実です。

 本書には、丸山さんの松田優作に対する愛憎入り乱れた思いが迫真の勢いで描かれています。

 さて、こうして松田優作の姿を振り返るうちに、懐かしさがこみ上げてきたファンも多いのではないでしょうか。実は本書には、そんな読者に向けたうれしいサービス(?)も用意されています。本書の後半に収録されているのは、『21世紀探偵秘帖 顔(フェイス)と影(シャドー)』というシナリオです。

 これは丸山さんが「登場する主役陣のひとり、『コールB』を、七十五歳の松田優作が演じる想定で、二〇二四年の夏に書いた」(本書より)という書き下ろしの新作です。「優作がかつて望んだ、『探偵もののB級ムービー、主役はすべて背中から撮る』、というオファーを汲んでいる」(本書より)そうです。

 丸山さんによると、「読者それぞれがキャスティング(配役)をし、脳内のスクリーンで封切っていただきたい」(本書より)とのこと。ここでなら父と息子の夢の共演もありえるでしょうし、人気・実力を兼ね備えた令和の俳優とのタッグも考えられます。本書のタイトルの通り、「生きている松田優作」をふたたび読者の中に見出すことができるかもしれません。

 没後40年を経てなお輝き続ける不世出の俳優・松田優作。本書は、その伝説に触れることができる貴重な一冊と言えるでしょう。

[文・鷺ノ宮やよい]

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