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最悪の悪夢が到来!『ボーはおそれている』

『ボーはおそれている』 2月16日(金)全国公開

『ヘレディタリー/継承』で映画ファンの注目を集め、『ミッドサマー』が全世界で大ヒットを記録するだけでなく、多くの観客に"消えない傷"を植え付けた天才監督アリ・アスターが、気鋭の映画スタジオA24と三度目のタッグを組んで世に放つ最新作がついに日本解禁。

日常のささいなことでも不安になる怖がりの男ボー(ホアキン・フェニックス)はある日、さっきまで電話で話してた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう"いつもの日常"ではなかった。これは現実か? それとも妄想、悪夢なのか?次々に奇妙で予想外の出来事が起こる里帰りの道のりは、いつしかボーと世界を徹底的にのみこむ壮大な物語へと変貌していく。

本作主演を務めるのは『ジョーカー』でオスカーに輝いた名優ホアキン・フェニックス。これまで様々な作品で怪演を見せてきた彼が極限の演技と表情を見せる本作は、そのキャリアの到達点になった。実家にたどり着くのが先か? それともボーの人生が転覆し、永遠に壊れるのが先か? 衝撃や恐怖を遥かに凌駕する"永遠に忘れられないラスト"が待つオデッセイ・スリラー。スクリーンで一度体験したら、もう元には戻れない。

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前半と後半で全く別の作品を観ているのかのような錯覚に陥る感覚。前半はボーが母親に会いに行こうともがき苦しんでいるが、後半は道中でおこる不思議すぎる出来事にユーモアも交えつつも、やっぱりアリ・アスターが監督というだけあってゾッとさせられることで悪夢を目の当たりにして目が覚める。

約3時間という上映時間の中で、伏線の回収が行われるのがベタな後半の展開だ。だが、予想できる道のりをいかないからこそ、良い意味で裏切られて全く終着点は見えない。そうして後半にいくにつれて、作品の世界にのめり込んでいった。

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3時間は長いかと思ったが、後半のほうがボーの終着点を知りたい気持ちが加速し、あっという間に感じた。この監督なので後味はすごく悪いというのが褒め言葉になるのか......一回観ただけでは全てを理解するのは難しい。
鑑賞後、時間がたってからもう一度鑑賞したいと思う、タチの悪い悪夢だ。

(文/杉本結)

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『ボーはおそれている』
2月16日(金)全国公開

監督:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、パーカー・ポージー、パティ・ルポーン
配給:ハピネットファントム・スタジオ

原題:BEAU IS AFRAID
2023/アメリカ/179分
公式サイト: https://happinet-phantom.com/beau/
予告編:https://youtu.be/N1vlJGAve2Y
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