もやもやレビュー

天才元建築家は、なぜ南極へ向かったのか? 『バーナデット ママは行方不明』

バーナデット ママは行方不明
『バーナデット ママは行方不明』
リチャード・リンクレイター,リチャード・リンクレイター,ケイト・ブランシェット,ビリー・クラダップ,クリステン・ウィグ,エマ・ネルソン
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

ケイト・ブランシェット様が建築家役だなんて、当然ハマっているだろうと、事前情報もあらすじもなにも調べずに観たのだが、これがとってもよかった。観終わったあとに調べたところ、ベストセラー小説を原作に、リチャード・リンクレイター監督が映画化したという。リチャード・リンクレイターといえば『ビフォア』シリーズをはじめ『6才のボクが、大人になるまで』などでおなじみ。テーマが恋愛であれ、家族であれ、心の移り変わりを描くのが上手な監督だなぁという印象がある。『スクール・オブ・ロック』も同じ人なんだから、なんて才能豊かな人なんだろう。

『バーナデット ママは行方不明』でケイト・ブランシェットが演じるのは、かつて時代の寵児と呼ばれた、天才(元)建築家バーナデット。栄光の日々を過ぎた今、彼女は(文字通り)息を潜めている。家からは必要以上に出ないようにし、外食も最低限。ママ友とは馴染めず、家事も買い物もオンラインお手伝いさんに丸投げ。対人恐怖症や広場恐怖症といってもいいレベル。

良き家族に恵まれているバーナテットだが、とりわけ15歳の娘ビー(エマ・ネルソン)がいい。母の個性をまるごと受け止め、ただの「ママ」として愛している。そんな娘は成績優秀のご褒美として家族三人で南極旅行へ行きたいという。意を決して希望を汲んでやることにしたバーナデットには当然、壁が立ち塞がっている。しかし、家族や近所との軋轢を抱えるうちに二転三転、なぜか彼女は仲違いの隣人と南極に向かうことになり...。

主婦としての孤独感。仕事を断ち切ることになった経緯と諦念。そして母として妻としての家族に対する愛情。「建築家」であったという設定にはきちんと筋が通っていて、内容にしっかり面白みを出している。一筋縄では済まさないぞ、という意気込みを感じるハートウォーミングな家族物語としては『リトル・ミス・サンシャイン』を思い出したのだけれど、そうそう、あの一家の末娘オリーヴちゃんも丸顔にロングヘアのメガネだった。そんなところもこの映画に似ていると感じたのかもしれない。チャーミングだったビー役のエマ・ネルソンは今作が映画デビュー。調べたところ、サンドラ・ブロック主演『消えない罪』に出ているようなので、早速観てみようと思う。

(文/峰典子)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム