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スギナに恋したあの日を思い出す----日比谷高校「雑草研究部」を描く映画『ザッケン!』

『ザッケン!』 4月3日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開

東京都立日比谷高校に実在する部活動「雑草研究部」をモチーフに、マンガワンと裏サンデーで連載された同名の漫画作品を映画化。本作『ザッケン!』は、『市子』の脚本や『書くが、まま』、『三日月とネコ』で日常の中に潜む希望を実直に描いてきた上村奈帆が、原作者自ら脚本・監督を手がけた注目の青春ストーリーだ。

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物語の主人公は、何かに夢中になれるわけでもなく、ただ日々をこなすだけの"どこにでもいる少女"杉野ゆかり(中島瑠菜)。彼女の前に現れたのは、雑草の一つひとつを愛し、その生命力に魅せられている同級生の徳田みみ(大島美優)、──通称<ドクダミちゃん>だった。部員不足で休部状態の「雑草研究部=ザッケン」を復活させたいと願うドクダミちゃんに戸惑いながらも、ゆかりは彼女とともに活動を始める。

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本作の最大の魅力は、「夢中になれない」「自分がまだ何者かわからない」という思春期の揺らぎを、足元の小さな植物たちが教えてくれる"自分らしさ"を通して繊細に映し出している点だ。実は筆者も学生時代にスギナの研究をしていた経験があり、地味に思える草花を深く掘り下げるザッケンの活動には非常に親近感を覚えた。野草愛好家<のん365 日野草生活>監修による本格的な「雑草雑学」が物語に自然な形で組み込まれており、道ばたの草花が単なる"雑草"ではなく、その名前や効能、季節の変化とともに鮮やかに描かれる様子はとても丁寧で観客と併走して歩いて説明してくれているような感覚にしてくれた。

W主演を務めるのは、主演作が続く中島瑠菜と、話題作への出演で注目を集める大島美優のフレッシュコンビ。見過ごしてしまいがちな足元の豊かさを、瑞々しい感性で切り取った『ザッケン!』。観る者の疲れた心をそっと掬い上げ、前を向くためのささやかな力をくれる、芽吹きの季節にピッタリの傑作青春映画だ。

(文/杉本結)

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『ザッケン!』
4月3日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開

脚本・監督:上村奈帆
原作:上村奈帆・モノガタリラボ _漫画:プクプク「ザッケン!」(小学館「マンガワン」連載)
出演:中島瑠菜、大島美優 ほか
配給:SPOTTED PRODUCTIONS

2026/日本映画/98分
公式サイト:https://www.zakken2026.com
予告編:https://youtu.be/hHAXTnkf8nA
Ⓒ2026上村奈帆・モノガタリラボ・プクプク/小学館/『ザッケン!』製作委員会

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