もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2025年11月号

『兄を持ち運べるサイズに』(11/28公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』五十一回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
11月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『プレデター:バッドランド』(11月07日公開)
公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/predator-badlands
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=5FSbkynnGSs

★Main_PB-TP2-088901.jpg 1987年に公開されたSFアクション映画『プレデター』。そのシリーズ初となるプレデターが主人公の完全な新章『プレデター:バッドランド』。
「狩りは初めてなのに、宇宙で一番危険な星に?」という声に重なるように若き戦士・デクの姿があります。彼が次々と現れる敵に襲われている中、空から降ってきた物体が彼を窮地から救う。それは上半身しかないアンドロイドのティア(エル・ファニング)だった。
「"敵"は簡単には殺せないわ。まさに最凶の存在。助けてあげよっか」と陽気に話すティア。拒否したかのような行動をとるデクですが、彼女を背負って歩いている姿もあり、二人がバディのように行動を共にする様子も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。デクが「最悪の地(バッドランド)」に来た理由は「究極の敵」を狩って、真のプレデターになることのようです。そして、誰かに創られたアンドロイドのティアは創造主に会いに行く、あるいはなにか指令を受けている可能性がありそうです。
 ラストでは狩りの中で破壊されてしまったティアから託されたデータや秘密のチップをデクが取り込んで最強のプレデターとなり、ラスボスを倒す。そして、デク自身が新しいティアを創り上げて、また二人で違う惑星を旅するというラストはどうでしょうか?

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『プレデター:バッドランド』
11月7日(金) 全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『平場の月』(11月14日公開)
公式サイト:https://hirabanotsuki.jp/
予告編:https://youtu.be/4-9AS_-4O-s?si=L2YWyC992XTUz2xH

WEB用_平場の月_メイン画像.jpg 朝倉かすみのベストセラー恋愛小説を、多くのテレビドラマや映画『花束みたいな恋をした』などを手掛けてきた土井裕泰が監督を務めた『平場の月』。
 妻と別れ、地元に戻って働いている青砥健将(堺雅人)。彼が中学時代に恋をしていた須藤葉子(井川遥)も彼同様に地元に戻ってきていた。三十年近くぶりに再会した二人は独り身同士、意気投合して離れていた時間を埋めていくのが予告編で見ることができます。
「お前、あの時なに考えてた?」「夢みたいなことだよ」という健将と葉子のやりとりもあり、中学時代の二人のシーンや患者衣を着てどこか覚悟決めているような彼女の姿もあります。
 ここからは妄想です。予告編の中で「私ね。青砥が一緒にいたいと思うようなやつじゃないんだよ」と言う葉子の胸元にある三日月の銀のネックレス。その次にはケースに入ったそれを見ているシーンが続くなど、タイトルの「月」を感じさせるアイテムも出てくるようです。
 「平場」という言葉はたいらな場所や通常の状態という意味があります。やはり、葉子の過去に大きな過ちや出来事があり、当たり前の日常を送りたいと彼女は考えてるようにも見えます。しかし、葉子は何かの病気で亡くなってしまい、健将は平凡な日々を、日常を彼女と過ごしたかったというほろ苦いラストではないでしょうか?

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『平場の月』
2025年11月14日(金)全国東宝系にてロードショー
配給:東宝
©2025映画「平場の月」製作委員会

『落下の王国 4Kデジタルリマスター』(11月21日公開)
公式サイト:https://rakkanooukoku4k.jp/
予告編:https://youtu.be/W5Xxn5fTrGM?si=v6PhKP7PyN4qG6f3

メイン:THE-FALL-Still-1_re.jpg デヴィッド・フィンチャーとスパイク・ジョーンズが製作をサポート、衣装はアカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞した石岡瑛子、構想26年、撮影期間4年、13の世界遺産と24ヵ国でローケーションをして撮影、2008年に日本公開。配信されることなく、幻の作品となっていたターセム監督『落下の王国 4Kデジタルリマスター』。
 大怪我を負って病院に入院しているスタントマンのロイ、そこに腕を骨折した少女のアレクサンドリアが現れる。ロイは少女に思いつきの冒険物語を聞かせ始めるのが予告編で見ることができます。物語はロイとアレクサンドリアの病院、彼が創り上げたもう一つの世界での鮮やかすぎる冒険譚の二層構造のようです。
 ここからは妄想です。私はこの映画はタイトルぐらいしか知らず、今まで観たことがないので自身にとっては新作ともいえます。予告編を見るだけでも幻想世界の映像美、石岡さんが手がけた衣装の煌びやかさが圧倒的です。また、以前公開したバージョンにカットしたシーンを追加した「完全版」となるようで、これは間違いなく映画館で観るべき作品でしょう。
 オチを妄想する以前に、この作品自体が監督の妄想を現実に落とし込んでしまった。不可能を可能にしてしまったという事実に胸が震えます。絶対に映画館で体験してきます。

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『落下の王国 4Kデジタルリマスター』
11月21日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、グランドシネマサンシャイン 池袋 ほか 全国公開
配給:ショウゲート
© 2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved.

『兄を持ち運べるサイズに』(11月28日公開)
公式サイト:https://www.culture-pub.jp/ani-movie/
予告編:https://youtu.be/6UjoWnz38xM?si=4SSrGvOIg5SmsvCo

★main.jpg 翻訳家でエッセイストの村井理子が実際に体験した日々をまとめたノンフィクションエッセイを、『湯を沸かすほどの熱い愛』を手がけた中野量太監督が映画化した『兄を持ち運べるサイズに』。
 何年も会っていなかった兄(オダギリジョー)が急に亡くなったという連絡を受けた理子(柴咲コウ)。ダメ兄に振り回されてきた理子は兄の元嫁の加奈子(満島ひかり)とその娘と息子と再会し、彼が住んでいたアパートの後片付けを一緒にすることになるようです。
「兄は身勝手で落ち着きがなく、一人では生きられない人だった」と語る理子、「もしかしたら理子ちゃんにはあの人の知らないところがあるのかなって思っちゃった」と言う加奈子の姿も予告編で見ることができます。
 ここから妄想です。亡くなった兄がどんな人だったのか、自分の知らなかった側面を妹である理子が知っていく、やさしい物語になるでしょう
 人間というのは多面体で、対する人それぞれに違う顔を、関係性を持っています。「この人はこういう人だ」と自分が思っていても、別の人から見たらまったく違う印象だったりすることのほうが普通です。きっと、観終わったら家族に、親しい人に会いたくなる、話したくなる作品のはずです。劇場で観ている時に一体誰が浮かぶのか少したのしみです。

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『兄を持ち運べるサイズに』
11月28日(金)公開
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

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