職場の「サイコパス」をどう見抜く? 20人の1人存在する危険人物の特徴と対処法

- 『サイコパスから見た世界: 「共感能力が欠落した人」がこうして職場を地獄にする』
- デイヴィッド・ギレスピー
- 東洋経済新報社
- 2,200円(税込)

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サイコパスというと、テレビドラマや映画などの印象から、冷酷な殺人鬼や犯罪者を思い浮かべる人もいるかもしれません。サイコパスの本来の意味は「他人にいっさい共感をもたず、自分が利益を得られるのであれば他人が生きようが死のうが知ったことがない人たち」のこと。現実には20人に1人の割合で存在するというのですから、私たちの職場や取引先などにいてもおかしくありません。しかし、彼らは狡猾で表面上は魅力的であるため、簡単に見分けることは難しいといいます。
そんなサイコパスの手口や能力を詳しく解説し、その見抜き方や対処法を教えてくれるのが、オーストラリア在住のデイヴィッド・ギレスピーが著した『サイコパスから見た世界:「共感能力が欠落した人」がこうして職場を地獄にする』です。
本書でサイコパスをわかりやすく言い表しているのが、「自分以外の人間など安物の椅子にすぎない」(本書より)というたとえ。椅子の役割は「自分を支えること」であり、その椅子が幸福かどうか、椅子が自分のことをどう思うかなど知ったことではありません。役目を果たさなくなれば、簡単に打ち捨てて新しい椅子を手に入れるし、利用価値がなくなればためらうことなく処分します。それがサイコパスの見えている世界であり、そこに良心の呵責や羞恥心のようなものはいっさいありません。なぜなら、脳の神経回路の障害により、生まれつき「共感する能力がない」ことこそがサイコパスの特徴だからです。
本書では、共感力が欠如している例として、私たちがよく知る著名人やキャラクターについても紹介しています。本書によると、『風と共に去りぬ』の主人公スカーレットやスティーブ・ジョブスなどにはその特徴が見られるそうです。名声を得た英雄やスターであっても、自分の職場や身の回りにいるとなれば話は別。その付き合い方は非常に困難なものになるかもしれません。
とはいえ、サイコパスはすぐに報酬が得られるのであれば、相手の感情に注意を払い、共感しているふりができるというのが恐ろしいところ。第5章から第8章までのケーススタディでは、あるストーリーを通して、サイコパスがどのように組織を破滅させるのかという実例を見て学ぶことができます。ステファニーという女性がリーダーを務める法律事務所のチームに、ジャスミンという新人が入って来たことから、それまで円滑に機能していた職場に有害な影響が出るように......。なぜアリスやマークは職場を去ることになったのか、なぜスコットは生き延びることができたのか、そこからはサイコパスとの付き合い方においての大きなヒントが得られることでしょう。
著者によると「サイコパスへの対処法のカギは『つねに誠実に行動せよ』」とのこと。グループが一致団結したコミュニティとなり、個々が誠実かつ率直に行動してサイコパスによる信頼関係の破壊を許容しなければ、組織を守ることはできると説きます。一人のサイコパスによって職場が壊れてしまわぬよう、本書は組織で働く社会人が読んでおくべきお守りのような一冊と言えるかもしれません。
[文・鷺ノ宮やよい]
