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ギャンブルに翻弄される貴族を描く『Ballad of A Small Player』

『Ballad of A Small Player』ネットフリックスにて配信予定

『教皇選挙』などで知られるドイツ出身の映画監督エドワード・ベルガーの新作『Ballad of A Small Player(原題)』が、今年で50回目を迎えたトロント国際映画祭にてプレミア上映されました。ローレンス・オズボーンの同名小説を原作とする本作は、マカオで借金地獄に追われる貴族の物語。主演は、『イニシェリン島の精霊』でアカデミー賞候補となり、現在は『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』での役作りが話題の俳優コリン・ファレル。

物語の主人公は、かつて裕福な暮らしをしていたもののギャンブル依存症により多額の借金に苦しむ貴族ロード・ドイル(コリン・ファレル)。きらびやかな街マカオで夜な夜なルーレットやバカラにはまり、負けを重ねるたびに深みにはまっていきます。そんな中、謎の女性と出会い、裏社会の人間とも関わりながら自分の過去や運命と向き合うことになります。

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本作では、コリン・ファレルのドアップのシーンなどが多く盛り込まれていますが、借金とギャンブルに支配され、脂汗を書きながらも這いつくばる姿に圧倒されます。肉体的にも精神的にも消費しそうなこの役をコリンは自身の才能で見事体現しているのがひしひしと伝わってきました。

また本作の映像美も注目したいポイント。ネオンに照らされるカジノ街、豪華なホテルや夜の街並みなど、撮影監督ジェームズ・フレンドが作り上げた映像は、物語をうまく彩り、ロード・ドイルの世界に没頭できました。華やかな舞台の裏で、破滅へと一直線で向かう男の心の闇を描いた本作。緊張感に溢れる演出が多々あり、アクションではないのに観客も思わず手に汗を握ってしまう、そんな一本に仕上がっていました。

本作はネットフリックスにて配信予定。

(文/トキエス)

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Image Credit: Courtesy of TIFF

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