『月刊予告編妄想かわら版』2025年10月号

『爆弾』(10/31公開)より
毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』五十回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
10月公開の映画からは、この四作品を選びました。
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『ワン・バトル・アフター・アナザー』(10月03日公開)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/onebattlemovie/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=Y_-fgOvW-6I
世界三大映画祭を制覇した唯一の監督であるポール・トーマス・アンダーソンがレオナルド・ディカプリオを主演に迎えた最新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』。
革命家のボブ(ディカプリオ)と同じく革命家の妻(テヤナ・テイラー)のやりとりの中で彼女が「革命の始まりね」と告げるシーンや、夫婦を追っている軍人のロックジョー(ショーン・ペン)がその妻に「また会うことになる」と話しているシーンを予告編で見ることができます。
「娘よ、聞いてくれ。昔、パパとママは罪を犯した」「ママは捕まった。俺らも危ない」とボブが娘のウィラに話している場面もあり、父が娘を守ろうと戦う物語のようです。
ここからは妄想です。予告編ではウィラが軍人たちに捕まるシーンや、「お前を守りたかった」「俺たちの革命に巻き込みたくなかったのに」というボブのセリフもあるので、最後はやはりボブとロックジョーの「バトル」になっていくのでしょう。
しかし、革命家夫婦というよりもロックジョーはどこか娘に固執しているようにも見えます。もしかするとロックジョーと妻の間に何か取引があり、できた子供がウィラという可能性もあるのかもしれません。だとすれば、ボブとウィラが真実を知っても父と娘であろうとする、家族間での革命が起きて終わるというラストではないでしょうか?
『ワン・バトル・アフター・アナザー』
10月3日(金)全国劇場公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
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『トロン:アレス』(10月10日公開)
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/tron-ares
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=o6Rw_1aLvvg
世界初の長編映画としてCGを本格導入した『トロン』の15年ぶりの続編となる『トロン:アレス』。
「AIやビッグテックの時代を迎え、我々はもうすぐ仮想世界に到達する。だが、我々が行くのではない。"彼ら"がやって来るのだ」というアレスの開発者が語るセリフ。そして、デジタル世界からやってきたAI戦士アレスたちの姿、さらにはデジタル世界自身がこちら側の現実世界へ姿を現すシーンを予告編で見ることができます。
「制御できると思っているの? 間違いよ」と開発者に進言している女性の姿もあり、現実世界はデジタル世界に侵食されていくのかどうかが見どころになりそうです。
ここからは妄想です。インターネット黎明期における今のネット社会の基盤となったいくつかの企業のトップたちはヒッピーカルチャーなどの影響を受けて、平和で調和に満ちたユートピアを夢見ていました。また、彼らは仮想現実やデジタル世界という「ここではないどこか」へという可能性や、新しいフロンティアを求めていたといいます。
近年の技術革新によって、デジタル社会がほんとうに実現する可能性としてこの映画が作られているかを十数年、何十年後か知ることになるかもしれません。この映画を観終わったあとに劇場を出たら、現実世界がデジタル世界に侵食されていないことを願いながら、劇場で目撃したいと思います。
『トロン:アレス』
10月10日(金)日米同時公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
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『ミーツ・ザ・ワールド』(10月24日公開)
公式サイト:https://mtwmovie.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=Oc5kQ8n_-4Y
第35回柴田錬三郎賞を受賞した金原ひとみの同名小説を、『ちょっと思い出しただけ』などの青春映画を手がけた松井大悟監督が映画化した『ミーツ・ザ・ワールド』。
「私が好きなのは擬人化焼肉漫画『ミート・イズ・マイン』」「このまま仕事趣味だけ生きていくなんて憂鬱です。孤独です」という由嘉里(杉咲花)は歌舞伎町で希死念慮を抱えたキャバ嬢のライ(南琴奈)と出会う。さらに既婚者だがホストをしているアサヒ(板垣李光人)や毒舌な作家のユキ(蒼井優)、BAR店主(渋川清彦)などと知り合っていく様子が予告編で見ることができます。
「鰓呼吸と肺呼吸くらい私たちは糧として生きているものが違うんです」という由嘉里の言葉が印象に残ります。
ここからは妄想です。「私以外のために、私は生き続けなきゃいけないの?」というライの言葉や「ゆかりんはさ、自分にできることがあったんじゃないかって思うのが嫌なんじゃない」というアサヒの言葉も予告編にあり、ライは何かの理由で亡くなってしまうのでしょう。
そして、ライとの日々や彼女になにかできたのではないかと考えた由嘉里は彼女がいなくなった後も歌舞伎町の住人として生きることを決める。そして、ライのような生きづらさを抱えている女性を見つけ、一緒に住み始めるという希望を感じるラストではないでしょうか?
『ミーツ・ザ・ワールド』
10月24日(金)全国公開
配給:クロックワークス
©金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会
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『爆弾』(10月31日公開)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/bakudan-movie/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=wG2nM6QduOY
「このミステリーがすごい!2023年版」「ミステリが読みたい2023年版」で一位を獲得した呉勝浩のベストセラー小説を永井聡監督が映画化した『爆弾』。
酔って暴行事件を起こし逮捕されたごく普通の中年男性のスズキタゴサク(佐藤二朗)。「一時間後に爆発します」と彼が宣言すると実際に爆発事件が起きてしまう。警視庁捜査一課の類家(山田裕貴)が取調室で向き合っているスズキに「爆弾をすべて見つけられたら私の勝ちだな」と告げる姿も予告編で見ることができます。
スズキは一体なにもので、彼の目的は何なのか? 刑事たちは爆弾のありかを見つけることができるのかという物語のようです。
ここからは妄想です。スズキタゴサクの言葉や仕草に事件のヒントがあり、取調室の中で彼と対峙する刑事たちが、いかに東京中に仕掛けられている爆弾が爆発する前に発見できるかという謎解きゲーム的な要素もたのしめそうです。
スズキタゴサクを演じている佐藤二朗さんの憎たらしい表情や類家たち刑事を翻弄する姿も見どころの一つでしょう。彼一人の単独犯とは思えず、警察の中に協力者がいるのかもしれません。ラストはひとつだけ爆弾がどうしても見つからずに、いつか爆発するのかもしれないという、スズキタゴサクの勝利にも見える引き分けで終わるのではないでしょうか?
『爆弾』
10月31日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
©呉勝浩/講談社 2025映画『爆弾』製作委員会
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文/碇本学
1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。