「オッドタクシー」クリエイターが挑む新境地!アニメ映画『ホウセンカ』

『ホウセンカ』 10月10日(金)公開
「オッドタクシー」のクリエイターチーム(木下麦 × 此元和津也)と、アニメーションスタジオ CLAP が贈る最新作を紹介したいと思います。
まず、「オッドタクシー」(ODDTAXI)は2021年に放送されたアニメです。登場人物が全員動物という少し変わった設定で、主人公のタクシー運転手がいつの間にか事件に巻き込まれていくストーリーでした。独特なタッチの画風に最初は戸惑うかもしれませんが、先の読めない展開と伏線回収の鮮やかさが大きな魅力であり、本作『ホウセンカ』にも通じる部分だと思いました。
『ホウセンカ』は、あるヤクザの人生と愛を描いた物語です。独房で孤独な死を迎えようとしていた無期懲役囚の老人に、「ろくでもない一生だったな」と声をかけたのは、人の言葉を操る"ホウセンカ"でした。その会話の中で、老人は自らの過去を振り返り始めます。男が人生を懸けた"最後の大逆転"とは何か。そして、その先に浮かび上がる物語とは──。
本作の大きな特徴は、題名にもなっている「ホウセンカ」の存在です。花がしゃべるのです。生まれたての頃と死が近づいた時にだけホウセンカの声が聞こえるという斬新な設定が、観客を一気に物語世界へと引き込みます。庭先に咲くホウセンカは、主人公たちが植えたものではなく、いつの間にかそこに居続け、声が届かなくても家族の成長を静かに見守っていました。ヤクザと花という、一見不釣り合いな組み合わせだからこそ、作品はより面白くなっているのだと思います。
登場人物が少ないのも本作の特徴です。主人公・阿久津と同居する那奈とその息子、ヤクザの先輩、そしてホウセンカ。わずか「4人と1輪」で織りなされる物語ですが、そこには濃密な人間ドラマが詰まっていました。「大逆転」の意味がラストで明かされたとき、爽快感と深い感動が同時に押し寄せてきます。
また、ヤクザを描く作品では現代の実写だと「大人の事情」で細かい制約(シートベルト着用など)が見えてしまい、時代設定が昭和でも違和感を覚えることがあります。しかしアニメーションである本作ではそうした制約がなく、シートベルトをしない、歩きたばこをするなど、昭和のヤクザ像がしっかり描かれていました。
さらに音楽の使い方もユーモラスで印象的です。誰もが耳にしたことのある楽曲が効果的に挿入され、エンドロールに至るまで最後まで聴きたくなる仕上がりになっていました。
(文/杉本結)
『ホウセンカ』
10月10日(金)公開
監督・キャラクターデザイン:木下麦
声の出演:小林薫、戸塚純貴、満島ひかり、宮崎美子 ほか
配給:ポニーキャニオン
2025/日本映画/90分
公式サイト:https://anime-housenka.com
予告編:https://youtu.be/g6vg_-XaToE
©此元和津也/ホウセンカ製作委員会