WNUへ導いてくれてありがとう『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』

- 『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い (字幕版)』
- Stephen Norrington,Sean Connery,Naseeruddin Shah,Peta Wilson,Tony Curran,Shane West,Stuart Townsend,Jason Flemyng,Richard Roxburgh,David Hemmings,Max Ryan,Tom Goodman-Hill,Terry O'neill,Rudolf Pellar,Winter Ave Zoli,Robert Willox,Ewart James Walters,Mariano Titanti,Robert Orr,Michael McGuffie,Joel Kirby,Marek Vasut,Michal Grun,Robert Vahey,Sylvester Morand,Huggy Leaver,Pavel Bezdek,Stanislav Adamickij,James Babson,San Shella,Ellen Savaria,Riz Meedin,Sartaj Garewal,Neran Persaud,Andrew Rajan,Daniel Brown,Aftab Sachak,Guy Singh Digpal,Harmage Singh Kalirai,Brian Caspe,Robert Goodman,Rene Hajek,Semere-A.D. Etmet Yohannes

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『アイアンマン』(2008)を皮切りに『アベンジャーズ』シリーズへと連なるマーベル・シネマティック・ユニバースが成功したためか、近年はハリウッド版ゴジラを軸とするモンスターバースとか、マーベルのライバル会社のDCユニバースとか、世界観を共有する作品群がやけに多い印象がある。
とはいえ本来別々の作品やそのキャラクターがほぼ一回きりの共演をするクロスオーバー作品なら昔から山のようにある。例えばモーリス・ルブランの「怪盗ルパン」シリーズにはコナン・ドイル作のシャーロック・ホームズが登場するエピソードがあるし(原文では頭文字を入れ替えているようだが邦訳はシャーロック・ホームズ表記)、江戸川乱歩作品にも明智小五郎が追う事件の黒幕がアルセーヌ・ルパンだったという作品がある。
こうした作品が多数発表されるのは単純に有名キャラクター同士が夢の共演を果たしたらワクワクする人が多いからに他ならないわけで、だったらいっそできる限り多くの作品やキャラクターを一挙に出してしまったらどうか、ということにチャレンジした作品もいくつか存在する。
アラン・ムーア作、ケビン・オニール画によるアメリカンコミック『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(1999/邦訳はジャイブ刊)はそうした企画の成功例のひとつで、同作を映画化したのが『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』(2003)だ。
19世紀末、正体不明の組織によって世界大戦の危機が訪れ、英国諜報機関はケニアで穏やかに過ごしていた冒険家アラン・クォーターメイン(『ソロモン王の洞窟』)に声をかける。アランがロンドンへ赴くとMと名乗る人物(「007」シリーズ)からチームを率いて世界を救へとの指令が。メンバーはネモ船長(『海底二万里』)、ミナ・ハーカー(『吸血鬼ドラキュラ』)、透明人間(著作権都合で彼だけ本作オリジナルキャラに改変)。さらにドリアン・グレイ、トム・ソーヤー、ジキル博士も途中から参加し、ノーチラス号でベニス、そして北モンゴルへ。敵の首領ファントム(『ファントマ』と『オペラ座の怪人』の合成らしいがはっきりとはわからない)と最後の戦いに挑む。
と、基本的に古典娯楽文学の登場人物勢揃いでワクワクすることこの上ないのだが、ちょっと問題があって、つまりなんというか、端的に映画のクオリティが高くないのである。カッコつけてるけどダサい、というのかな。そこはあくまでも個人の好みの問題かもしれないのだが、おそらく10人見たら8人から9人は低く評価する映画な気がするのである。
あと、メンバーが揃うまでに上映時間の半分近くが終わるし、揃ってからは内輪揉めばっかりしているし。アラン・ムーア原作コミックは本作以降も複数映像化されているが(『ウォッチメン』『Vフォー・ヴェンデッタ』他)、ムーアは今では自分の名前をクレジットさせないことでも有名であり、その原因のひとつは本作の完成度のせいである可能性が高い。
などとネガティブなことばかり書いてしまっているが、既成の作品群のクロスオーバーというだけでなんだか楽しそうなのは間違いがないし、やはり多種多様な作品群が関わってくる伊藤計劃&円城塔の『屍者の帝国』は、本作(の原作)および同工異曲のキム・ニューマン「ドラキュラ紀元」シリーズの影響下にあるらしく、実際に楽しむなら原作の方が間違いなく良さそうとはいえ、その入口としてはそれなりに意味があるんじゃないのかな、とは思う。
また、この映画版も少しは「わかってるな」と思うところもあるにはある。アラン・クォーターメイン初登場小説『ソロモン王の洞窟』を80年代に映画化した『キング・ソロモンの秘宝』は、一見すると「インディ・ジョーンズ」の便乗企画なのだが、実際にはクォーターメインこそがインディの元ネタのひとりであり、他にも複数いる元ネタのひとりにジェームズ・ボンドがいる。ボンドといえば映画で最初に彼を演じたのはショーン・コネリーで、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』でインディの父を演じたのもまた、そうした背景込みでコネリーである。本作ではそのショーン・コネリー自身がクォーターメイン役を担当しており、これは「わかっている」キャスティングといえるだろう。評価ポイントは確かにそれぐらいかもしれないが、それだけあれば十分じゃないだろうか。強引だろうか。
ついでに書いておくと、本作(の原作)および「ドラキュラ紀元」シリーズについて辿っているうちに、そのインスパイア元とされているらしいものとして「Wold Newton Universe(WNU)」(https://www.pjfarmer.com/woldnewton/Pulp.htm)という遊びというか文学概念というか、そういうものまで見つけることとなった。
これはSF作家フィリップ・ホセ・ファーマーによるターザンやドク・サベージらの伝記という体のフィクション(未邦訳)に端を発するもの。ここでファーマーは、18世紀に墜落した隕石によって遺伝子変異が起こった人々がおり、ターザンやドク・サベージ、さらにはシャーロック・ホームズやモリアーティ、フー・マンチュー、サム・スペード、フィリップ・マーロウ、ジェームズ・ボンド、アルセーヌ・ルパン他多数の有名キャラクターたちがその子孫であると設定した。
作家で編集者のウィン・スコット・エッカートはその発想を拡張し、こうしたキャラクターが登場する原作群はもちろん、別の作家によって書かれたスピンオフもどんどん同一世界の出来事として吸収、別の作家たちはもちろん別作品ともクロスオーバーさせがちなため、他の作品群にも拡大し、本来別々の作品の出来事がひとつの世界の歴史として並ぶとんでもない分量の年表が作られ続けている。厳密なルールにより、同一キャラクター登場作品でもこの年表から省かれるケースはあるものの、それでもあまりにも多すぎるし英語なので本当にざっとしか眺められていないのだが、SF・ホラー・ミステリーを中心としたジャンル小説(および映画、コミック等々)の巨大なガイドとしても面白く、世の中には酔狂な人がいるものだなあと感心する。ちなみに日本からはモンキー・パンチ『ルパン三世』が取り込まれている。
と、このように、映画『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』は単体ではかなりしょうもない作品ではあるのだが、個人的にはWNUに辿り着かせてくれただけでも価値のある一本、といえなくもないのであった。
文/田中元(たなか・げん)
ライター、脚本家、古本屋(一部予定)。
https://about.me/gen.tanaka

