首吊り、毒殺、焼却遺体......1万体以上の検死・解剖に携わった法医学医が解き明かす"死者からのメッセージ"

死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」 (単行本)
『死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」 (単行本)』
フィリップ・ボクソ
三笠書房
2,200円(税込)
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 「完全犯罪」は本当に存在するのか。そんな疑問に真正面から向き合うのが、ベルギーの法医学医フィリップ・ボクソによるノンフィクション『死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」』です。

 1万体以上の検死・解剖に携わってきたボクソ氏が、自ら経験した数々の不可解な事件をもとに、死体に残されたわずかな痕跡から真相を導き出していく本書。自殺に見せかけた首吊り死体、完全犯罪をもくろんだ毒殺、結果的に父を殺せなかった娘、自分を14回も撃って死んだ男性......。登場するのは、まさに「事実は小説よりも奇なり」なエピソードばかりです。しかしボクソ氏は「すべての完全犯罪には『穴』がある」と言います。

 ここでその例として、本書にあるエピソードを少しだけ紹介します。

 元夫の失踪について警察官から事情を聞かれたある女性が、元夫を殺して遺体をビルトイン薪ストーブで焼却したと自白しました。しかし、男性一人の遺体を居間の薪ストーブで完全に焼き尽くすことなどできるのでしょうか。また、精神鑑定の専門家の診断では、彼女の自供は虚言であると結論づけられましたが、本当にそうなのでしょうか。

 実況見分の際に、女性に核心を突く質問をおこなうボクソ氏と、それに対して淡々と丁寧に答えていく女性とのやりとりは、ドラマのワンシーンを見ているかのようです。読みながら思わず、彼女の心の奥底にある心理にまで思いを馳せてしまいます。この事件の死体は何を語ったのか、気になる人はぜひ本書を確認してみてください。

 色恋や憎悪、執念、嫉妬といった人間の弱さや脆さも隠さずに描かれている本書ですが、ボクソ氏の語り口は軽妙で、ときにユーモアたっぷりなことから、ページをめくる手が止まらないほど引き込まれます。だからといって、ボクソ氏が死者への敬意を欠いているというわけではありません。ボクソ氏の語り口は、幾多の死と向き合ってきたからこそたどり着いた「いつの日か死が私に微笑みかけるまでは、死を笑い飛ばしたい」(本書より)という信条からくるものだといいます。

 ボクソ氏の著書は現在シリーズ3冊目まで出版されており、シリーズ累計発行部数は全世界160万部を突破しています。その始まりとなる本書は、読者の知的好奇心をくすぐる極上の法医学ノンフィクションといえるでしょう。

[文・鷺ノ宮やよい]

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