アカデミー賞で話題『エミリア・ペレス』

『エミリア・ペレス』 3月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
本年度ゴールデングローブ賞最多4部門受賞を果たし、本年度アカデミー賞®では最多12部門13ノミネート、"非英語映画"として歴代最多ノミネートの快挙を達成した。
主演のカルラ・ソフィア・ガスコンがトランスジェンダー女性として史上初のアカデミー賞®主演女優賞にノミネートされるなど、世界の賞レースで60以上の受賞、200以上のノミネートを成し遂げている。アカデミー賞ではゾーイ・サルダナが助演女優賞を見事手にした。また歌曲賞も受賞し2冠を得た。
優秀な才能をボスに利用され、不遇の日々を送っていた弁護士のリタに、驚くべき依頼が舞い込む。メキシコ全土を恐怖に陥れていた麻薬カルテルのリーダー、マニタスが「女性としての新たな人生を用意してほしい」というのだ。リタの完璧な計画が成功し、それぞれが新たな人生をスタートさせた4年後、マニタスはエミリア・ペレスとしてリタの前に現れる。マニタス時代に犯した罪に心を痛めるエミリアは、リタの協力のもと人々を救うために壮大な活動を始める。だが、エミリアが亡きマニタスのいとことして、妻と二人の子供を呼び寄せたことから、運命は思わぬ方向へと激しく動き出す──。
本作、アカデミー賞の大本命として話題となっているが、サスペンス、ミュージカル、ドラマ、犯罪、アクションと多岐にわたるあらゆるジャンルが一つの作品のなかに存在する。だからといって難しい内容やメッセージではなく「愛」というテーマの元に現代的な要素を多様に含んで制作した結果として出来上がった作品なのだと感じた。
また、カンヌ国際映画祭始まって以来初めて女優賞が4人の女性に与えられた。審査員長を務めた『バービー』のグレタ・ガーウィグ監督は、「4人はそれぞれが秀でていたが、 一緒になると超越していた」と惜しみない絶賛と共にその理由をコメントしている。
その4人とは、リタを演じたハリウッド超大作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで広く愛されているゾーイ・サルダナ。自身もトランジェスターでマニタスとエミリアの両者を演じきったカルラ・ソフィア・ガスコン。マニタスの妻ジェシー役のシンガーとしても全米の若者から絶大な人気を誇るセレーナ・ゴメス。エミリアと心を通わせるエピファニアに扮したアドリアーナ・パス。
男性優位社会で才能を搾取され手柄を横取りされてきたリタ、男性の肉体から解放され本当の自分を取り戻したいと願ったエミリア、麻薬王と恐れられたマッチョな夫に逆らえず子育てにすべてを捧げてきたジェシー、夫のDVに心身共に傷つけられたエピファニア。この女性たちの共通点はどんな苦境に立たされても自分自身の根源にある大切なものを忘れることなく大切にしている点だ。大切にしているからこそ、守り方は人それぞれで信念を貫く方法についてもラストは考えさせられる展開となっている。大切なシーンでミュージカル風になりこの女性たちと自分をリンクするのは難しいけれど、歌で気持ちを共感させられ盛り上げられていく感覚はインド映画に通ずるものがあるように感じた。
話題作を観たいなら本作をおすすめしたい。
(文/杉本結)
『エミリア・ペレス』
3月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
監督:ジャック・オーディアール
出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス
配給:ギャガ
2025/フランス/133分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/emiliaperez/
予告編:https://youtu.be/a_r-iaJDf0M
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