もやもやレビュー

ヨーロッパ企画、映画に流れないでよ『リバー、流れないでよ』

リバー、流れないでよ
『リバー、流れないでよ』
⼭⼝淳太,上⽥誠,藤⾕理⼦,⿃越裕貴,⾓⽥貴志,久保史緒⾥(乃⽊坂46),本上まなみ,近藤芳正
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京都をベースとして活動する人気劇団「ヨーロッパ企画」のオリジナル映画シリーズ第二弾『リバー、流れないでよ』。京都の貴船にある旅館を舞台に、なぜか2分経つと時間が巻き戻ってしまう世界で起こるスラップスティック・コメディ。

加えて、今回は貴船神社が恋愛の神様を祀っていることもあってか、恋愛の要素が主成分になっている。いつも通りのヨーロッパ企画のタイムスリップもの、細かい笑いも散りばめられていて、ファンにとっては、安心して観られる映画となっている。

が、このヨーロッパ企画の映画シリーズ、古くは『サマータイムマシン・ブルース』や『曲がれ、スプーン』から言えるのだが、これ、映画化する必要まったくなくないか?って疑問が、たぶん誰もが思ってしまうことなのだ。

僕もヨーロッパ企画のことは好きで、何度も劇場に足を運んだことがあるが、演劇としては笑えても、映画としては笑えなかったり、意味のない(ように思える)カメラワークがどうしても煩わしく思えたり、不満が残ってしまうのだ。これだったら、まだ舞台を録画したものを販売したほうがいいのでは?

もう一度言うが、僕はヨーロッパ企画が大好きである。だからこそ辛口になってしまっている。たぶん、主宰の上田誠も演者もスタッフも、映画性と演劇性の違いなど、とうにわかった上で作っているのだ。これが、マネタイズの厳しい演劇界にとっての、ひとつの処世術だと割り切って。いやしかし、だからこそ、僕は、本当に映画でよかったのか、と長い目で見て問いたいのだ。

(文/神田桂一)

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