次期ローマ教皇の座をかけた極上ミステリー『教皇選挙』

『教皇選挙』 3月20日(木・祝)全国公開
アカデミー賞で脚色賞を受賞した『教皇選挙』。本作は『西部戦線異状なし』の監督も勤めたエドワード・ベルガー監督が再びメガホンを取るということで実力派キャストが大集結している。
本作を楽しむ上で、日本人にはあまり馴染みのない「ローマ教皇とはどんな存在なのか?」をしっかりと理解していたほうがストーリー展開が理解しやすいと感じたので説明したい。ローマ教皇とはキリストの代役としてローマ・カトリック教会の最高責任者となった人物のことである。様々なことを決める権限をもっている。そんな教皇の日常的な職務を助ける補佐として枢機卿が世界各国に100人あまりいる。ローマ教皇の職務は特別なことがない限り死亡するまでとされている。そして教皇が亡くなると2週間の間に世界中から枢機卿がバチカンに集結する。そして、次期教皇を決めるための「コンクラーベ」が開催される。
物語は、ローマ教皇が突然の心臓発作で亡くなるところから始まる。教皇の死後に新教皇を決めるコンクラーベが行われる。コンクラーベ期間中は外部との接触も禁じられ、その中に入れるのは枢機卿とほんの一握りの関係者のみとされている。そんな密室空間で様々な暗躍も見え隠れするサスペンス。最後に教皇の座につくのは一体...。
ここで、「コンクラーベ」についても説明したい。次期教皇を決めるために枢機卿が行う選挙なのだが、必須条件として3分の2の賛成票を得る者が出るまで繰り返されるという驚きのシステム。票が割れて決まらないと礼拝堂の煙突から黒い煙があがり市民に知らせる。また、決まると白い煙で市民に知らされる。コンクラーベ期間中100人あまりの枢機卿団は外部との接触を断たれ隔離状態となる。宿泊施設の聖マルタの家と選挙会場のシスティーナ礼拝堂を行き来することになる。
今回、私は煙のことを知らずに鑑賞したので黒い煙になぜ市民は落胆しているのか?と思っていた。細かい知識があるとより、サスペンスとして楽しめるだろう。
個人的にはカトリックの知識を深く知らなくても十二分に楽しめた。ラストの展開がとても衝撃的で脚本力にうならされた。終盤カメが歩いているシーンが登場する。日本では縁起の良い動物として広く知られているが、聖書には「カメ」という動物は登場しないことから「明確に言及されないもの」として映画に登場することが多々ある。今回も、最高の出番で登場した!と本当に印象的なシーンとなっている。
密室で繰り広げられる教皇の座を巡る争いから目が離せない作品となっている。アカデミー賞ノミネート作品は近年R指定作品が多くなってきている。その中で本作は年齢制限もなく誰もが観られる作品となっていることから幅広い年代に楽しんでもらえる作品となっていると思う。
ぜひ、劇場で衝撃のラストをかみしめてほしい。
(文/杉本結)
『教皇選挙』
3月20日(木・祝)全国公開
監督:エドワード・ベルガー
出演:レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニ
配給:キノフィルムズ
2024/アメリカ・イギリス合作/120分
公式サイト:https://cclv-movie.jp
予告編:https://youtu.be/yJYqh2VvZtw
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