もやもやレビュー

2分はやっぱり短い!『リバー、流れないでよ』

リバー、流れないでよ
『リバー、流れないでよ』
⼭⼝淳太,上⽥誠,藤⾕理⼦,⿃越裕貴,⾓⽥貴志,久保史緒⾥(乃⽊坂46),本上まなみ,近藤芳正
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 本作は、『夜は短し歩けよ乙女』の脚本や、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の日本語吹替版脚本を手掛ける上田誠さん率いる劇団ヨーロッパ企画によるオリジナル長編映画第2弾。

 舞台は、京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」。中居として働くミコト(藤谷理子)は、別館裏の貴船川のほとりにたたずんでいたところを女将(本上まなみ)に呼ばれ、仕事へと戻ります。しかし2分後、なぜか先ほどと同じ場所に立っていました。
 そしてミコトだけでなく、番頭や仲居、料理人、宿泊客たちはみな異変を感じ始めていました。
 例えば、いくら温めてもずっと熱くならない熱燗に、食べても食べてもなくならない〆の雑炊。出たくても永遠に出られないお風呂...。

 どうやら2分経つと時間が巻き戻り、全員元にいた場所に戻ってしまう現象が起きているようでした。そして、それぞれの"記憶"だけは引き継がれ、連続しているのでした。

 面白かったのは、2分の間に、今後どうするか相談するもあっという間に時間切れになり、何度も集まらなければならなかったり(しかも遠い)。また、せっかく相談ができて、記憶は継続することが分かって、喧嘩はやめよう、嫌な感情はずっと継続するからと言った先から喧嘩が始まったり。お風呂場から出られないお客様は毎回頭にシャンプー姿で登場したり。
 その他にも色々なことがあり、2分はやっぱり短いんだ...と再認識しました...。

 また、当然に早く元に戻ってほしいと願う人もいれば、恋人との別れが待っていたり、締め切りに追われていたりと、先へと時間が進まないでほしいという想いを抱えている人がいることも現実味があり、違う意味で面白かったです。

 どうやって2分間がループする謎現象から抜け出せるのか、登場人物たちの交錯する想いもどう実を結ぶがなど、とても見どころのある一本です。また、主題歌を京都出身のくるりが歌っていて、温かみのある楽曲が映画に合っていてまた良かったです。

 ちなみに、ヨーロッパ企画の第一弾の『ドロステのはてで僕ら』は、世界各国の映画祭で上映され23もの賞を受賞しており、そちらも併せて必見です。

(文/森山梓)

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