巨万の富を手にした「視聴率の女王」。その裏にあった衝撃の半生とは

細木数子 魔女の履歴書 新装版 (講談社文庫 み 74-2)
『細木数子 魔女の履歴書 新装版 (講談社文庫 み 74-2)』
溝口 敦
講談社
770円(税込)
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 2026年4月27日から配信が始まったNetflixのドラマシリーズ『地獄に堕ちるわよ』。六星占術ブームを巻き起こし、テレビ番組では「地獄に堕ちるわよ!」の決めゼリフで一世を風靡した占い師・細木数子の生涯を描いた同作は、国内シリーズのTOP10で1位を記録するなど反響を呼んでいます。この参考文献として使われたのが、2008年に刊行されたノンフィクション作家の溝口 敦氏による『細木数子 魔女の履歴書』。この書籍に若干の加筆・修正をほどこした文庫本の新装版が先ごろ出版され、これまた注目を集めています。

 もともと本書は、『週刊現代』2006年5月20日号から同年8月19・26日合併号まで14回にわたって連載された記事をまとめたものでした。当時、細木氏がテレビ番組で若い世代に向けて説教や道徳を垂れるのを見て、「なかなかいいこと言ってるじゃないか」と留飲を下げていた年配の視聴者が多かったのも事実。それだけに、溝口氏が暴いた真実は世間に大きな衝撃を与えたのでしょう。なんせその実像は、女ヤクザそのもの。同書では、渋谷の青線地帯で生まれ、銀座、赤坂の夜の街で育った細木氏が、どのように巨万の富を得て「視聴率の女王」にまで成り上がったのかが、多くの証言や細かな裏取りとともに明かされています。

 それにしても、なぜこれほどまでにブラックな経歴を持ちながら、細木氏はテレビ界で女王として君臨していられたのでしょうか。溝口氏はこれについて三つの強みを挙げています。一つ目は、占い師という立場が偏見と独断を商品にする舞台装置になっていた点。二つ目は、彼女の背後にある暴力団の影が脅威を与えていた点。三つ目は、勉強会や相談会、墓石販売などの活動で培った財力と組織力があった点。

 しかし、「視聴者が喜んでいる」「視聴率が取れるから」という理由で彼女を起用し続けていたテレビ局に問題はないのでしょうか。溝口氏は同書で「彼女の言説を検証なしに垂れ流すメディアも同罪といっておく。彼女は表現や言論の暴力的な圧殺者であり、メディアに抱き合い心中を迫る者である」(同書より)と記しています。

 逆に、コンプライアンスが強く叫ばれ、インターネットで情報が流出することもある今の時代であれば、細木氏のような人物はテレビ界に居場所がないことも考えられます。そのような意味では、溝口氏が言うとおり「時代の持つ低俗性が細木を生み育てた一面がある」というのは確かかもしれません。富、名声、色恋、そのすべてを手にした裏にある、戦後の時代を生き延びた日本人の一つの姿を、ドラマだけでなく書籍からも読み取ってみてはいかがでしょうか。

[文・鷺ノ宮やよい]

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