もやもやレビュー

偉大な功績を知り、また、変わっていてもいいと思えた。『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(字幕版)
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(字幕版)』
モルテン・ティルドゥム,グラハム・ムーア,ベネディクト・カンバーバッチ,キーラ・ナイトレイ,マシュー・グード,ロリー・キニア
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

 現代の「コンピュータ科学の父」「人工知能(AI)の父」とも称される天才的数学者アラン・チューリングの実話に基づく生涯を描いた本作(2015)。第87回アカデミー賞では8部門でノミネートされ、脚本のグレアム・ムーアが脚色賞を受賞しました。ムーアは、長年チューリングの大ファンで、念願かなってその生涯を映画化したそう。

 以下は、グレアム・ムーアのアカデミー賞受賞の際の感動的なスピーチです。
「アラン・チューリングはこのような舞台でみなさんの前に立つことができませんでした。でも、わたしは立っています。これは不公平です。16歳の時、わたしは自殺未遂をしました。自分は変わった人間だと、周りに馴染めないと感じたからです。でも、いまここに立っています。この映画を、そういう子どもたちに捧げたい。自分は変わっている、どこにも馴染めないと思っている人たちへ。君には居場所があります。変わったままで良いのです(以下略)」

 1939年、第二次世界大戦が始まり、ケンブリッジ大学の特別研究員で27歳にして天才数学者として称えられるアラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は、英国政府の秘密作戦に参加します。解析不能と言われたナチスの暗号機エニグマの解読に挑み、見事成功させ、イギリス軍の勝利に大いに貢献します。
 しかし、機密情報であったため、チューリングが生涯その功績によって評価されることはありませんでした。

 本作で印象的だった点は、幼少期に出会った友人(恐らく初恋の相手)や、一時婚約したジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)との出会いなど、変わり者のチューリングでしたが、人に恵まれていたということ。
 特に、コミュニケーションがうまく取れないチューリングの性格もあって、エニグマ解読チームが全く機能していなかったのを、ジョーンが皆の仲を取り持ったり、暗号解読でも彼女が力を発揮し、チームが解体された後もチューリングを支え続けました。
 
 本作から、偉大な功績も、決して一人だけの力で成しえることができたわけではなく、様々な人との出会いや支えがあって成しえることができたのだということを実感しました。また、チューリングの功績が長い間隠されていた事実から、自分が知らないところで、どこかの誰かが、たくさん努力したり苦悩や苦労して作り上げたものや功績は、大小問わずきっと山ほどあって、そのお陰で今の平和だったり便利になった今世があることも忘れてはいけないのだと強く感じました。
 
 変わっていると言われがちな筆者は、冒頭のムーアの言葉に感銘を受けました。変わっているあなたにもぜひ観て、感じてほしい本作です。

補足...チューリングは同性愛者でもあり、当時は罪に問われたため、逮捕される。刑務所に入るか、科学的去勢(ホルモン治療)するかを迫られ、後者を選択するが、自宅にて死亡しているところを発見され、短い生涯を閉じた。その後、2009年ゴードン・ブラウン首相が彼の扱いについて公式に謝罪。2012年にはエリザベス女王が恩赦し、晴れて「無罪」となる。

(文/森山梓)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOK STANDプレミアム