もやもやレビュー

予想の斜め上をいくストーリーに期待!『サイレントラブ』

『サイレントラブ』 全国公開中

「そして、愛は動き出す―。」
このキャッチコピーに2023年山下智久と新木優子主演の『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』のような空気感の純愛を想像した。
見事に予想を裏切り、駆け抜けていったような作品だった。鑑賞後、監督は『下衆の愛』『ミッドナイトスワン』で、人々の魂を今も激しく揺さぶり続ける内田英治監督だったんだと確認して予想通りに進まないストーリー展開にも納得した。

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本作のあらすじは、声を捨て、毎日をただ生きているだけの蒼(山田涼介)。ある日、不慮の事故で視力を失い絶望の中でもがく音大生・美夏(浜辺美波)と出会う。何があってもピアニストになるという夢を諦めない美夏に心を奪われた蒼は、彼女をすべてから護ろうとする。だが、美夏に想いを伝える方法は、そっと触れる人差し指とガムランボールの音色だけ──。

最初にスクリーンに現れた美夏の目は真っ赤でかなり驚いた。本当に落ちてしまうのではないかと思うくらいのスピードで建物の屋上から身を投げようとする姿を蒼が必死で止めようとする。そんな出会いの2人から物語はスタートする。
美夏の行動はどれも本気を感じさせるもので寡黙な蒼の心をも動かすパワーを感じた。
蒼は本当に人付き合いも苦手で話すことをしないし、手話を使ってのコミュニケーションをとるわけでもない。
自分の殻にこもってでてこない姿を周りの友人も心配しながら、理解してサポートしていることが少しずつわかって、蒼の過去を知った時には苦しい気持ちだった。蒼は不器用だけど彼なりの優しさを美夏に向けていた。

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今回ラブストーリー映画初主演ということでキラキラした王子様のような山田涼介を期待していただけに少しびっくりしたけれど、静かな中にある愛も素敵だった。
2人のこれからがもっとみたいと思う作品だった。
内田監督が熱望したことで実現し、久石譲が、本作のためにオリジナル楽曲を手掛けているので音響のいい環境で楽しんで欲しい。

(文/杉本結)

***
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『サイレントラブ』
全国公開中

原案・脚本・監督:内田英治
出演:山田涼介、浜辺美波 ほか
配給:ギャガ

2023/日本映画/116分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/silentlove/
予告編:https://youtu.be/OJZOTsHqDEY
©2024「サイレントラブ」製作委員会

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