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"奇跡"と称賛された事故をイーストウッド監督が映画化『ハドソン川の奇跡』

ハドソン川の奇跡(字幕版)
『ハドソン川の奇跡(字幕版)』
トム・ハンクス,アーロン・エッカート,ローラ・リニー,クリント・イーストウッド,クリント・イーストウッド
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 トム・ハンクス主演、クリント・イーストウッド監督の映画『ハドソン川の奇跡』。2009年、極寒のニューヨークで実際に起きた事故を取り扱った本作。死者を1人も出さなかったことでも有名なこの事故では実際、どんなドラマが起きていたのでしょうか。

 2009年1月15日、サリー(トム・ハンクス)が機長を務める航空機のエンジンに、鳥の群れが激突。エンジンが機能しなくなった機体は、どんどんと墜落していきます。管制室とのやりとりをしながらも、サリーはハドソン川への不時着水を決断。それは、事故発生から208秒間の出来事でした。無事に機体を不時着させたサリーは、乗客全員生存という偉業を成し遂げます。しかし、その判断は本当に正しかったのか。事故調査委員会の追及の中、ある疑惑が重なっていき、サリーはなんと殺人未遂の罪に問われてしまうのです。

 本作は、事故そのものを描いてハラハラさせる「九死に一生」的ストーリーというわけではありません。本作で重要なのは、サリーの判断について、厳しい目が向けられていること。これが、本作の緊張感を高めている重要な源となっています。また、サリーが悪夢を見るシーンも重要。その悪夢とは、彼がマンハッタンビルの高層ビルに飛行機を突っ込んでしまうというもの。このように、彼自身も自分の判断に疑問を投げかけているのです。事故後、メディアからも出会う人々からもヒーロー扱いされたサリー。彼はどのように疑惑を晴らしていったのか......? トム・ハンクスの素晴らしい演技が彩るシリアスなドラマを楽しんでみては。

(文/トキエス)

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