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これ、実話なんです!『ロスト・キング 500年越しの運命』

『ロスト・キング 500年越しの運命』 9月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

本作、実話というから驚き。

フィリッパ・ラングレーは、職場で上司に理不尽な評価を受けるも、別居中の夫からは生活費の為に仕事を続けるよう促され、苦悩の日々を過ごしていた。ある日、息子の付き添いで舞台「リチャード三世」を観劇したことで、彼女の人生は一変。シェイクスピアの史劇により、冷酷非情な王として名高いリチャード三世だが、その既成事実に疑問を抱くように。やがて、フィリッパは彼の真の姿を明かそうと、遺骨探しに没頭していく――。

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いまいちピンとこないかもしれないが、例えば日本の歴史上の人物になぞらえてみると、たとえば織田信長に興味を持ったとする。酷い逸話がたくさんあるけど、本当はいい人だったに違いないので汚名返上したいと奔走する。最後に本能寺で亡くなったのは本当か? どこに遺骨があるんだろう? きっとここにあると思う!と発掘作業をはじめてしまう。そんなような話なのだ。

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彼女自身、持病があることでリチャード3世と自分にリンクする部分があったように感じることから物語は動き始める。それがまた運命的というのか、ドラマチックに描かれていた。

シェイクスピアといえばとても有名だし、描かれていることに間違いなどないだろうと思う人も少なくないだろうけど、彼女は違った。リンクしたからこそ否定される、悪者のように扱われることに違和感があったのだろう。
自己否定された時に、別のなにかに没頭したり、自分を肯定できるなにかが欲しくなったりするような人間の内なる欲求をとてもうまく表現している作品だった。

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母親でもあるフィリッパだけど、子供の食事を作ることさえ忘れてリチャード3世のことを調べるなど、没頭する様子が生活の中にみえるからこそリアリティも感じた。
人生でどんなに真面目に頑張ったとしても、正当な評価を得られないことは誰にでもあるだろう。自己肯定感を高めたい人間の欲求を体感するとともに、探究心を刺激してくれる作品だった。

(文/杉本結)

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『ロスト・キング 500年越しの運命』
9月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:サリー・ホーキンス、スティーヴ・クーガン、ハリー・ロイド、マーク・アディ ほか
配給:カルチュア・パブリッシャーズ

原題:THE LOST KING
2022/イギリス/108分
公式サイト:https://culture-pub.jp/lostking/
予告編:https://youtu.be/02qgTO8uejQ?si=nacHdH-YcA7yLBXD
© PATHÉ PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.

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