もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2023年09月号

『マルセル・マルソー 沈黙のアート』 9月16日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて公開

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』二十五回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
09月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『スイート・マイホーム』(09月01日公開)
公式サイト:https://sweetmyhome.jp/
予告編:https://youtu.be/OVI_8in397g

メイン.jpg 俳優の斎藤工が監督として、神津凛子のミステリー小説を映画化した『スイート・マイホーム』。清沢賢二(窪田正孝)と妻のひとみ(蓮佛美沙子)、一人娘のサチの家族三人が住み始めた念願の一軒家。しかし、その家で何か事件が起こって刑事と賢二がやりとりをしている様子や、ひとみが誰かに監視されているような視線を感じていたり、サチがいなくなったと話している姿も予告編で見ることができます。
「この家には絶対なにかいるんだよ」というひとみのセリフや、賢二が家にある狭い通路に入っていく姿もあります。
 ここからは妄想です。予告編を見ているとホラー映画なのか、と思う映像などがありますが、「観る者すべてを惑わす驚愕のミステリー」という文字が出てくるので、やはり貞子などのような怨念や幽霊などが犯人や原因ではなさそうです。
 また、賢二の兄(窪塚洋介)が「お前何も知らなかったのか?」と聞き、弟が兄に謝っているシーンも予告編にあります。となると、兄弟の家族の方に関係がありそうです。賢二は何かの理由で忘れてしまったが、かつてこの家に家族で住んでいて、そこで父親か母親を殺していたとか、あるいはもう一人の兄弟がいた。もしかしたら賢二は双子でもう一人が家の通路の奥で生き続けていて、復讐されていたというラストかもしれません。

サブ1_TR.jpg

『スイート・マイホーム』
9月1日(金)全国公開
配給:日活、東京テアトル
©2023『スイート・マイホーム』製作委員会 ©神津凛子/講談社

『ほつれる』(09月08日公開)
公式サイト:https://bitters.co.jp/hotsureru/
予告編:https://youtu.be/v5Wg6_apzrk

main.jpg 29歳で今年、第67回「岸田國士戯曲賞」を受賞した加藤拓也によるオリジナル脚本長編映画第二作『ほつれる』。綿子(門脇麦)は結婚しているが、すれ違いが続く夫・文則(田中健太郎)との関係は冷え切っていた。それを忘れさせてくれる木村(染谷将太)との関係が彼女にとって救いになっていた。しかし、「大切」な恋人である彼は彼女の前で事故に遭って死んでしまう。
 木村がいなくなってしまったことに実感がわかない綿子、夫との関係がさらにぎこちなくなっている様子も予告編で見ることができます。「向き合えないのは怖いでしょ」という綿子のセリフもあり、残された彼女と夫の関係が物語の主軸になりそうです。
 ここからは妄想です。綿子が「誰にも会わないかな?」と木村に言い、「大丈夫でしょ」と彼が答える場面も予告編にあり、そのことを思い出した彼女は二人で訪れた場所を巡っていくようです。恋人を失い、夫とすれ違ったまま生活を続けていく綿子は、自分の感情と現実にどう折り合いをつけていくのでしょうか。
 また、英梨(黒木華)という女性と綿子が話しているシーンもあり、彼女は綿子の友人のようですが、もしかすると木村の恋人や妻なのかもしれません。綿子は夫と別れ、共に「大切」な人を失った英梨と新生活を始めるというラストかもしれません。

sub1.jpg

『ほつれる』
9月8日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ビターズ・エンド
ⓒ2023「ほつれる」製作委員会&COMME DES CINÉMAS

『マルセル・マルソー 沈黙のアート』(09月16日公開)
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/marceau/
予告編:https://youtu.be/kjoao7L2RQs

marceau_main.jpg "パントマイムの神様"の生涯をアーカイブ映像と関係者のインタビューで迫ったドキュメンタリー映画『マルセル・マルソー 沈黙のアート』。マルセル・マルソーはパントマイムを"芸術"にした存在と言われています。また、後世のアーティストにも多大な影響を与えていおり、彼とマイケル・ジャクソンがにこやかに会話している場面も予告編で見ることができます。
 ユダヤ人であるマルセル・マルソーは第二次世界大戦中、ユダヤ人の子供たち300人余りをスイスに脱出させる際には、恐怖に怯える彼らを道化師となって楽しませたという話も残っています。
 ここからは妄想です、と言いたいところですが、私が彼のことを最初に知ったのは自分と同じ誕生日の有名人だったからです。そういう繋がりもあって、今回はこの作品を取り上げてみようと思いました。
「フランスもドイツもイギリスも日本もない。笑って泣くのです」「パントマイム。チャップリンやキートン、沈黙の芸術です」と語っているマルセル・マルソーの姿も見れます。ユダヤ人として生きてきた彼は、差別や戦争に対して、パントマイムという芸術で抗おうとしたはずです。彼が残したものを今見て知ることで、ウクライナが現在進行中の戦禍であることも含めて、もう一度戦争について考えてみる機会になるのではないでしょうか?

marceau_sub1.jpg

『マルセル・マルソー 沈黙のアート』
9月16日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて公開
配給:パンドラ

『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』(09月22日公開)
公式サイト:https://turtles-movie.jp/
予告編:https://youtu.be/GHL6WeElaMg

★メイン_TMNT_MM_124K2.jpg 世界的なポップカルチャーアイコン・タートルズの新世代版『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』。人間から隠れて暮らしてきたタートルズ(レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ドナテロ)とその育ての親であり師匠のスプリンター。タートルズたちは師匠の心配をよそに十代の少年たちのように青春を謳歌したいと考えているようです。
 そんなタートルズの前に現れるのは彼ら同様にミュータント化した「スーパーフライ」という犯罪集団。タートルズはニューヨークを守るために「スーパーフライ」と戦うことになるようです。
 ここからは妄想です。かつてアニメやファミコンゲームとして慣れ親しんでいたタートルズの新作を観れるのは正直うれしいです。また、手書き質感のあるアニメーションのビジュアルもかなり期待できます。
 予告編ではタートルズは人間に受け入れられて、高校に行ってみたいと話しています。「スーパーフライ」を倒して街を救った後にそうなるかと思いきや、やはりごく一部の人にしか理解されず、隠れたままの生活を続けるのでしょう。しかし、彼らの理解者が増えたことで夜遊びの回数が増えて、スプリンターに怒られるというラストシーンではないでしょうか? 早くも続編制作が決定していました。これはお楽しみはしばらく続きそうです。

サブ1_TMNT_MM_166K.jpg

『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』
9月22日(金) 公開
配給:東和ピクチャーズ
© 2023 PARAMOUNT PICTURES.TEENAGE MUTANT NINJA TURTLES IS A TRADEMARK OF VIACOM INTERNATIONAL INC.


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム