もやもやレビュー

話題のラブストーリー『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』

『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』 公開中

多くのヒット小説を生み出してきた小説サイト「野いちご」で連載され、第1回野いちご大賞を受賞した、汐見夏衛によるベストセラー小説「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」(スターツ出版刊)。シリーズ累計発行部数 55万部を超え、「10代女子が選ぶ文芸小説No1」にも選ばれた(出典:日販W+)珠玉のラブストーリーが待望の映画化!

サブ①_2_茜.jpg

マスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の茜。自由奔放で絵を描くことを愛する、銀髪のクラスメイト・青磁。何もかもが自分とは正反対の青磁のことが苦手な茜だったが、彼が描く絵とまっすぐな性格に惹かれ、茜の世界はカラフルに色づきはじめる。
次第に距離を縮めていくふたりの過去はやがて重なりあい、 初めて誰にも言えなかった想いがあふれ出す――。

サブ①_1_青磁.jpg

私自身も原作を読んでいました。学生時代の甘酸っぱい恋愛と、マスクを外すと息苦しさを感じる主人公茜が現代らしい作品です。
マスクをすることで友達との間に1つの壁を作っているような茜にもやもやするのですが、余計なことを言わないための防波堤のようなマスクの存在に、切なさを感じる場面も。コロナ禍を過ごした学生の、マスクを外すことへの違和感なども社会問題になっています。素顔が見られることの恥ずかしさだったり、茜がマスクをしている理由とは違うのですが、やっぱりマスクというアイテムにウイルスからの感染防止という役割以外の「壁」という機能があるように感じました。

サブ⑥.jpg

本作のメガホンをとったのは『美しい彼』の酒井麻衣監督。酒井監督はいつも人の魅力を存分に引き出す力があって学生のキラキラした青春映画との相性はバッチリなのです。劇中に登場する小物使いもとても上手でセンスがあるといつも思っています。
さらに、監督の作品はいつも、食事シーンが注目ポイントの1つになるのです。みんな美味しそうに食べるし、実際今回はこんなカフェがあるなら行ってみたい!と思ってしまいました。

主演の白岩瑠姫は銀髪がトレードマークのクラスの中心にいる青磁を演じています。教室の中ではみせない夢や自分の世界を大切にしている姿が画面いっぱいに広がっていました。『自分の目にうつる世界、それはすべて自分のもの』という台詞がとてもかっこよくて印象的でした。

ヒロインの茜を演じた久間田琳加は序盤ずっとマスク姿で素顔がみえないのがもったいないとさえ思ってしまうのは私だけではないはず。家族の前では心配をかけないように元気いっぱいを演じて、学校ではマスクをするという繊細な役柄だからこそ彼女のキラキラの笑顔が見られるシーンではみているこちらまで幸せな気持ちになれました。

新しい季節の始まりに心地よい空気を感じられる一本です。

(文/杉本結)

***
サブ②.jpg

『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』
公開中

監督:酒井麻衣
原作:汐見夏衛『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』(スターツ出版刊)
出演:白岩瑠姫(JO1)、久間田琳加 ほか
配給:アスミック・エース

2023/日本映画/100分
公式サイト:https://yorukimi.asmik-ace.co.jp
予告編:https://youtu.be/yTcgOLh7GdU?si=hN1Dp8WuD1hQx7Md
©2023「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」製作委員会

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム